nuage d'orage 上原有栖
おもむろに陽が陰った
目で見えぬ層が重くなる気配がある
遠くから耳に流れ込む 微かな予兆
西空のむこう側に重なっているのは
灰色の積乱雲
夏風 雨ふらし
あと少しで嵐がくる
道の端で立ち昇る蚊柱
一寸の虫にも五分の魂が宿っている
私は汗を垂らしながら
集(たか)る渦巻きを眺めていた
ともに強き風吹けば消し飛ぶモノ同士
遠雷よ
果たして此処へ至るまでに
どれほどの涙を流させてきたのか
予兆から目を逸らしてはいけない
遠雷よ
吹き晒せ風 嵐で洗い流したまえ
この道に染み付いた血の涙を
巧妙に隠された慟哭の轍を
お前の力で抉り更地にしてしまえ
風が止んで全てが終わったあと
愚者は涙を流して奇跡を叫ぶだろう
賢者は顔を伏して愛を唱えるだろう
※タイトルはフランス語で「嵐の雲」を意味する。
読み方:ニュアージュ・ドラージュ