寂しさ 相野零次
友達のいない僕は
寂しさが一番の友達だ
いつでもただいまって言えば
おかえりって言ってくれる
今 とても泣きたいよ
そんなときも泣けばいいよと
そっと背中をさすってくれる
ふと僕の孤独じゃない時間は
誰かに奪われているんじゃないかと思った
すぐに返して下さいと
おねがいしたいけどそれが誰なのかわからない
鏡の前に座る僕の瞳をじっと見つめる
もう一人の僕がじっとこちらを見つめ返す
そこには無表情な僕がいて笑いかける
僕の笑い顔は瞳が淀んでいる
何か気にさわることでもしたのだろうか
それともお前か!お前なのかと
鏡に近づくにつれ僕から
瞳の中の僕が遠ざかっていく
一体何人の僕がそこにいるのだろう
僕のアイデンティティーを守る僕と
崩壊させようとする僕は同じところに存在するのだろうか
僕はひげを剃る
鏡の僕もひげを剃る
うまく剃れなくてイライラする
お前だ!僕の敵は!
僕のアイデンティティーがまた崩壊していく
鏡からひげそりの刃を新品に替える
よく剃れる
僕の憎しみも共に
何がそんなに憎いのだろう
何がそんなに恐ろしいのだろう
わからない
わからないが何か秘められている気がして
瞳の奥の剃り残しと淀んだ瞳の奥のさらに奥、
チカチカ点滅する光を見つめる
孤独よ 本当に僕の友達なのかい?
もし君に裏切られたら僕はきっともう生きていけない