2026年5月26日から5月28日までのご投稿分の評です
大変お待たせしました。
2026年5月26日から5月28日までのご投稿分の感想と評です。
「英雄の剥離」 松本福広さん
松本福広さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「英雄の剥離」の評を送らせていただきます。
一連目の戦国時代は大量殺人時代と表現、的確だと思いました。
人の命を、生活を奪えば奪うほど地位を得られた。
そして因果応報のように滅びていった。
<教科書を閉じる
きっと彼の事は書かれていない。
彼とは誰のことか、二連目からゆっくり見えてきます。
<1945年8月6日――
世界史の骨に日付が刻まれた。
青空を見た男は、仲間に天気の話をする。
晴れ後、ゲルニカ。
原爆を投下する前のある種の軽さが
酷く映ります。
三連目からの為政者によって作られた英雄という
称号の違和感を、四連目でさらに展開させます。
読み手も英雄にされた人物の心境を想像しました。
<責めてくれ 讃えてくれ。
ここに英雄にされた人間の真理があると
思いました。
両面が表側のコインは、為政者に無理やり飲み込まされた
ように見えて。それでも淡々を進んでいきます。
<英雄は文脈の血で
言葉の定義を揺らす分岐点だ。
それならば
その真偽は誰が決めるのだろう?
読み手もこの疑問を抱きました。
七連目から表現が変わります。
「俺」が英雄に問いかける流れで進みます。
痛々しく、酷いように感じながら、虚しさも漂っている。
英雄という巨像に押し込められた者と酷い形で記録された
者と交わらない問いかけが、余韻として残りました。
こちらの力不足であさって方向の詠みをしてしまったかと
思います。何度も読み返しながら難しさを感じ、想像が膨らみました。
御作佳作一歩手前とさせていただきます。
「僕に囁かないで」 三津山破依さん
三津山破依さん、ご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「僕に囁かないで」の評を送らせていただきます。
「あなた」は何者なのでしょう。
妖艶な雰囲気で「僕」を誘う様子は悪魔のようにも見えます。
一連目は大人の女性と若い男性の一場面のように見えます。
<最後は一緒に
このあたりから様子が変わります。
<あなたは囁く。
そして、笑う。
僕は拳を握って目を瞑る
「僕」は「あなた」の誘惑に耐えている。
それも性的なものではなくて、生と死を
選択させるような怖さがあります。
二人の関係性や出来事が書かれていない分、
こちらの想像が大きく広がります。
最後の連は「あなた」に飲み込まれてしまいそうな
「僕」がいます。もしかしたら、飲み込まれてしまった
後かもしれない。
「あなた」の囁きが、笑顔が恐怖心を煽る。
想像が想像を呼ぶ一篇でした。
御作佳作一歩手前とさせていただきます。
「誕生日」 aristotles200さん
aristotles200さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「誕生日」の評を送らせていただきます。
この詩の魅力はタイトルから想像できない展開になっているところです。
読後のいたたまれなさは尾を引きました。
<子は気づいた
目の前にある
焼かれた羊肉の塊は
父が盗んできたものだと
一連目から不穏です。何があったのか気になります。
子どもは父親の愛情の裏にある罪に気づいています。
四連目からの子どもの行動から罪を犯した父親へ怒りと軽蔑がにじんで
暗く広がっていきます。
<子がいう
父さん、盗んだんだろ
この犯罪者め
うなだれる父親
子の言葉に反論することができない
いたたまれなさが出ています。
警察に連行される父親にかなしみを向けず、
スーパー店員や警察に「なんて偉い子だろう」と褒められたことを
喜ぶ。この親子の関係性に想像が巡ります。過去に何があって
こういう結果になったのか、子どもは何を見て来たのか。
想像していくともう一篇の詩を書けそうな気がしました。
<僕は偉いんだ
と言いながら目が笑っていない、そんな表情が浮かびました。
不穏でありながら、想像を巡らせる余白のある一篇でした
御作佳作とさせていただきます。
「無音の口笛」 ゆづはさん
ゆづはさん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「無音の口笛」の評を送らせていただきます。
甘やかな余韻の残る一篇でした。
<静寂のなかへ
ひとつの息を吹き込む
世界の耳には
ただの微かな風の音
<重すぎる言葉が
タイムラインの底へ沈んでいく
この透明な振動だけが
言葉の海を突き抜ける
いいですね、ここ。
爽快な気分になります。
三連目で「僕」と「君」の
親密さが香ります。
<ここにいるよ
気づいているよ
恋の雰囲気と友情のあたたかさも
感じられます。
相手の心に届けたい思いが強いです。
最後の連も思いの強さと艶やかな瞬間を
見たような気がしました。
読後に余韻と温度が残る一篇でした。
御作佳作とさせていただきます。