歩く 朝霧綾め
この地面はずっと続いていくのだろうか?
もう少し歩けば何か見つかるだろうか?
無遠慮な朝日にさえ苛立つのを忘れてしまう
そんな目覚めを諦めきれずに
今日も右足を出し 左足を出す
私が休む日陰はあるだろうか?
いっぱいに葉を広げた欅の木を見つけたので
根本にごろりと寝そべると
そこは誰かの庭だった
道理で綺麗すぎると思った
怒られて追い出されて
芝生の草を服につけたまま
また歩いた
小さな一軒家の前を通り過ぎた
窓からこぼれる灯りを見た
その暖かさは私のものではなかった
そこに辿り着き見つけ出した
他の誰かのもの
この先に私が落ち着ける場所はあるだろうか?
私の椅子はふかふかだろうか?
誰かが私の横を通り過ぎた
私より少し背が高い人
おそらく二度と会うこともないだろうし
それを残念にも思わない
ただ うっかりその人の幸運を願ってしまったのは
その人もまた 歩いていたから
私は歩いている
ポケットに手を入れて俯きながら
誰かと出くわしてはすれ違い
たまに怪しまれて たまに怒られる
誰かにわかってもらうことも
誰かをわかってあげることもない
でも大丈夫
方角を聞かれたらちゃんと答えるから
必要があれば水筒の水を分けてあげるから
それくらいの優しさならきっと持ったままでいられるから
この地面はどこまで続いていくのだろうか?
自分が居るべき空の下をいつかは悟れるのだろうか?
私はポケットに手を入れて
相変わらずの猫背で
右足を出し 左足を出す
天気のいい日にはもしかしたら少しだけ顔を上げて
小さく歌でも口ずさみながら
地面とそこに続く
前を見て歩く