セピア色の共鳴 ゆづは
手元に残る 一枚の写真
誇らしげに回る黄金の円盤と
光のなかにいた
若き日の私たち
竹林を抜ける風の音が
葉擦れの向こうで 重さを帯び
見えない歯車のように
私の胸の奥で
脈を持ちはじめる
嵯峨野の端に佇む 音の聖域
いま 緑の闇をひらいて
記憶の底へと繋がる
あの日
誕生日のテーブルを囲む
あなたの笑顔
その背後で
大きなディスクオルゴールが
静かに息をひそめていた
曲の名は思い出せない
けれど あの時
私を捉えて離さなかったのは
空気を抱え込むように沈む
深い低音のひだ
一枚の円盤が
舞台の上で ゆっくり回りだす
刻まれた無数の物語が
櫛歯に触れるたび
百年の時が いまへと
こぼれ落ちる
入れ替わる円盤が運ぶ
重層の調べ
かつての職人が
指先に託した祈りは
音となって
古都の静寂へ 溶けてゆく
あの館では 今もなお
私たちの愛した物語が
黙々と 回り続けているだろう
いつか あなたと二人で
あのセピア色の響きのなかへ
再び帰る日を待っている