MENU
2,164,798

スレッドNo.7330

セピア色の共鳴  ゆづは

手元に残る 一枚の写真
誇らしげに回る黄金の円盤と
光のなかにいた
若き日の私たち

竹林を抜ける風の音が
葉擦れの向こうで 重さを帯び
見えない歯車のように
私の胸の奥で
脈を持ちはじめる

嵯峨野の端に佇む 音の聖域
いま 緑の闇をひらいて
記憶の底へと繋がる

あの日
誕生日のテーブルを囲む 
あなたの笑顔
その背後で
大きなディスクオルゴールが
静かに息をひそめていた

曲の名は思い出せない
けれど あの時 
私を捉えて離さなかったのは
空気を抱え込むように沈む
深い低音のひだ

一枚の円盤が
舞台の上で ゆっくり回りだす
刻まれた無数の物語が
櫛歯に触れるたび
百年の時が いまへと
こぼれ落ちる

入れ替わる円盤が運ぶ 
重層の調べ
かつての職人が 
指先に託した祈りは
音となって 
古都の静寂へ 溶けてゆく

あの館では 今もなお
私たちの愛した物語が
黙々と 回り続けているだろう

いつか あなたと二人で
あのセピア色の響きのなかへ
再び帰る日を待っている

編集・削除(未編集)

ロケットBBS

Page Top