空虚 相野零次
時間と空間が歪んでいる
そのなかを僕が泳いでいる
すでに生と死を乗り越えている
愛されたかった
もっと恋をしたかったはずなのに
君は薔薇の花束を持っていた
素手だったので腕が血まみれだったが
そんなことを気にしているようすはなかった
僕は宇宙の果てから名前を呼んだ
誰の名前かはわからない
きみの名前かもしれないし
君が飼っていた猫の名前かもしれない
空間は謎だった
いつからここにあるのか
いつからここにいるのか
全ては闇に騙されていた
僕たちは何を求めているのだろう
生きるとは何だろう
春の光はもう過ぎ去って
夏の猛暑の中だった
とろけているのはアイスクリーム
凍っているのは僕の心臓
何の感慨もなかったけど
君がそこにいたからキスをした
君は抵抗しなかった
無表情だった
精神だけが渦巻いていた
それは誰のものなのか?
いつからそこにいるのか?
全ては繰り返されていた
僕たちは同じ問いと答えを反芻していた
意味のない時間がすぎていた
どこからだろう
救急車のサイレンが聞こえる
誰かが殴られてケガをしていた
痛そうだと僕は思った
ここからは何も出来ない
そこへはいけないし
いっても僕は医者じゃない
空間は未知なる言語で満たされていた
解読することは出来なかった
僕は無になりたかった
伝えたいことは
なんにもない
ことを伝えたかった
僕は一粒の酸素
僕は一個の石ころ
君は僕の恋人
僕の名は宇宙