歴詩奇譚「三成二人」 第一章 三浦志郎
〇 奇妙な生い立ち
近江の地侍 石田正継
戦国大名浅井家にしばし仕えた
その祖は一説に
相模国 石田郷(現・神奈川県伊勢原市付近)の住人なり
その祖は一説に
木曽義仲を討ち取った
三浦流・石田次郎為久
その功により近江石田村を与えられ という
正継の嫡男は早逝
二男は正澄
この度生まれた三男は
後の石田三成
実は―
双子なり
双子なり
この二人の幼名
佐吉(兄)といい
佑吉(弟)という
〇 秀吉と出会う
佐吉(右利き)
佑吉(左利き)
一卵性双生児
この時代 双子と左利きは共に忌避された
当時、先に産まれた方を弟とし、後に産まれた方を兄とした。
父・正継は思案の末、石田家菩提寺・観音寺住職・清湖和尚に、ある事を依頼する。
「当家にて三男が生まれた。ただし双子だ。而して願いあり。ひとり、寺男(てらおとこ)
として使い養育願えまいか?弟の佑吉と申す」
住職清湖和尚の思惑
(石田殿の依頼なり。どこぞの浮浪児を拾って雑用をさせ育てし、その理由で事は済む)
住職は承知した。
長じて名を三成という
当然ながら瓜二つ
ただし 性格はまるで違う
佑吉 寺に預けられ 育つ
武家で左利きは由々しきこと
寺で右手に矯正された
(この乱世に片腕を失っても片方が使える武家の習いでもある)
佑吉、織田信長の臣・羽柴秀吉と出会う。狩りの帰りの秀吉へのもてなし。
三度その都度湯の熱さを変える細やかな心づくし。三献の茶。
秀吉、その配慮に感じ入り、佑吉・三成を居城・長浜に召し出した。
ただし 父・正継の意向により
秀吉に差し出したのは(兄・佐吉)三成のほうだった
後年 秀吉政権の中枢は
切れ者(兄・佐吉)石田三成に託された
〇 政権下の二人
やがて石田三成・双子兄弟。佐吉・佑吉の役割分担のようなものが成立する。
兄・佐吉は多く大坂にあって秀吉の側近。豊臣政権に参与する。
弟・佑吉は秀吉から与えられし近江・佐和山十九万石の領地を差配する。
(兄・佐吉三成)
その才幹により
豊臣麾下の多くの大名に畏怖される
(弟・佑吉三成)
その慈悲により
多くの領民に慕われる
三成・双子の事実を知るのは
父母・正澄兄・菩提寺住職清湖和尚の他
石田家三人の重臣のみ
島 左近(しま さこん)
蒲生備中(がもう びっちゅう)
舞 兵庫(まい ひょうご)
それぞれ武勇に優れ 加うるに
島……軍師 その智謀 神の如し
蒲生……家臣団の掌握力あり
舞……家政・領土経営力あり
佐吉・三成が豊臣政権下で重んじられたのは
佑吉・三成が領地で統治よろしきを得たのは
本人たちの能力もさりながら
前記 三家臣の働きがあったからだ
三人 それぞれ 両・三成と誓詞を取り交わしている
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つづく。 次回は7/3。