羽痕(はあと) 上原有栖
予報が外れて雨が降った夜
ずぶ濡れの幸運
勢いに任せて部屋へ連れ込んだことを
神さまは許してくれるだろうか
出逢ってまだ三ヶ月
運命なんて陳腐な言葉は信じていない
けれどこの気持ちは
一目惚れとしか言いようがなかった
横顔を見て
天使って本当にいるんだ、と思った
脱衣所の暗がりで着替える音が響く
「背中、見られたくないから」
その言葉と衣擦れが
火照る耳を刺激する
騒々しいテレビは早々に消した
夜が深まると
周りの音が呼吸(いき)を潜めていく
横になり手と頬で触れて感じた
あなたの背中
布越しの皮膚は砂のように硬くて熱い
すべてを知りたくて
背中を見せて欲しいと頼んだ
細く息を吐くと
あなたは寝間着を上へと捲っていく
乳房を隠しながら
髪を掻き揚げ顕になった背中には
白い羽模様の痣
大きく広がる羽痕が━━━
醜いでしょ、と微笑む仕草に
わたしの心は堕ちた
『天使って、やっぱりいたんだ』
今日から運命を信じることにした