夏の追憶達 夏目兼緒
雨の小さな雫を、紫陽花が泣いているように
匂い立つ土に涙を落とす季節から
アズールブルーの高い空に変わる季節になると
毎年会いたくなるのです。
日焼けしたシワシワの顔で
ビロードのように滑らかな輝きを持った野菜を手渡してくれたあなたを。
麦わら帽子を被って
夏の日差しの中、汗を拭きながら畑から歩いてくるあなたを。
あぁ!
また私は、あなた達が居ないことを思い知らされる…。
あぁ…
今年も私は受け入れる覚悟がないのです。
みんみん蝉と油蝉が鳴く時間から
ヒグラシの鳴く時間に変わるとき
宵闇の待ち通しさと共に
少しの切なさが私を襲うのです。
幼馴染と家路を急いだ田んぼ道
薄暗いあぜ道に立つ
モールス信号の様な電信柱
私達を追い越そうとする雷雲
今でも
何もかも鮮明に思い出せるのに!
今、その場所には何も残っていない…
あるのは思い出だけなのです。
夏の追憶達が今年もやってきます。
ああ!
私は今年も受け入れる事が出来ないのです…。
愛おしすぎて
懐かしい夏の日がまた今年もやってきます。