全力で君を愛するということ トキ・ケッコウ
全力で君を愛するということ
力の限り愛するということ
パンを齧っても
水を飲んでも
米を炊いても
人を罵倒しても
あるいはそれらの全てから
復讐されても
全力で君を愛するということ
キリストを持ち出したっていい
エホバ
ヤハウェ
などなど
絶対の神を
召喚したっていい
もうどうにでもなればいいではなく
もうどうにでも
なれるのだということ
全力で君を愛するということ
それは愛するなんて蓮っ葉な
ことばでさえ愛するということ
だからこんなに難しいことや
悲しいことは
他にそうあるはずはない
でも
なんということだ
ぞんざいにも軽率にも
君を扱ってきたというのに
全力で君を愛するということ
愛するという
いつもの蓮っ葉なことばでさえ
まるで報いかなにかのように
耳元で歌い上げ
胸元から
おおきく声を張り上げ
まるで槌(ツチ)と鑿(ノミ)のように
ぼくは君を削りつづけている
その昔
輸入してきた
そもそもが西洋式の表現
だからそれは滅多に洗うことのない
洒落たタキシードのようで
そのようにまるで手垢のついたまま
構わず着回し
悦にいっている訳だが
そんな目くらましのような
実体のなさを
愛してしまっている
だから
全力で君を愛するということ
それ自体がもし正しいなら
愛という名の付く言葉を
金輪際
みんな
まとめて
捨ててやろう
そうしてぼくは
愛という言葉より
もっとしわくちゃに
千切れんばかりに畳まれた
数字まみれの沢山の紙切れ達を
腹のそこからグイっと絞り出すように
苦しまぎれの
際どい言い訳のまま
全力で君を愛するということ
もう
どこにも逃げ込まないのだ