天空マラソン 相野零次
美しくたくましく生きることが
僕の望みだった
人々は笑い 願いは花に変わって
仄かに香るは桜の花
僕は空へ向けて垂直に昇っていった
両足のかかとから爪先まで
しっかりと大気を踏みしめる
この日のために開発された
大気を固体にかえるシューズで
まるで競歩のような歩みで進んでいく
太陽の光はまぶしかった
心地よい暖かさだった
数機のヘリコプターが
TV中継していた
僕は時おりカメラ目線で手を振ると
背中から大歓声の波が押し寄せた
とても良い気分だ
雲の中を通ると
雨がさらさらと降ってきた
肌にあたって滑るように流れていった
初夏の気候にはちょうどよかった
挑戦者は他に10人いた
僕は中継地点である
雲のてっぺんまで辿り着いた
ちょうど陽が沈むところで
360度 陽が僕を淡く照らし
最高の景色だった
僕は額からうっすらと流れる汗を拭った
自然と笑みがこぼれていた
ゴールまでの道のりはまだ遠かった
遥か上空かすかに見える影
月がゴール地点だった
脱落者はいなかった
大気圏に突入した
大気が無くなったので
一旦宇宙船の中で専用の宇宙服に着替え
専用に作られた道路の上を歩く
あくまでも月まで歩くのが目標だ
宇宙船に乗っては意味がない
そうして数時間後
僕らはついに月まで辿り着いた!
秒速約10キロ 10時間の道のりだった
僕の美しくたくましい行き方に
またひとつ勲章が加わった
ビバ 僕と彼らの人生!
この先の日々にも栄光あらんことを!