カエルの置物 石川ぼうず
「なんだ、これ?」
朝、トイレを出ようとしたその時
それは目に入った
昨日までこんなものはなかったはず
手のひらサイズのかわいらしいカエルの置物
平日の朝は時間に追われている
そのままアパートの鍵を閉め会社に直行
会社に行く道すがら考える
昨日はまっすぐアパートに戻った
あのカエルの置物はいったい何だろうか?
会社について早々、上司に呼ばれる
「朝からついてないな」
心でつぶやきながら重い腰を上げる
上司はにこやかに笑っている
なんでも以前、見積りを出した大口の仕事が決まったらしい
カエルのおかげか?
そんなわけはない
しかし、これは始まりだった
カエルを手に入れてから僕の周りは
すごい勢いで回り始める
仕事は驚くほど順調になり
商店街の福引にあたり
なくしたと思っていた腕時計が戻ってきたり
欲しかった限定品が最後の一つだった
気づけば恋人までできていた
ひょっとして僕はとてもすごいアイテムを
手に入れたのではないだろうか
いつからかトイレに入るたび
拝み
カエル様を磨く僕がいた
出勤前には頭を下げ
帰宅すれば今日の出来事を報告する
休日には特に念入りに磨き上げる
それをしないと
何か悪いことが起きる気がした
恋人との旅行でも
カエル様が気になって早く帰りたくなった
悪いことが起きればカエル様に謝り
良いことが起きればカエル様のおかげと感謝した
カエル様さえいれば人生はうまく回っていく
誰が何を言おうとカエル様のおかげ
そう、カエル様さえあれば僕の人生は安泰
しかし、ある日手を滑らせカエルの置物は粉々に……
それ以降、僕の幸運も粉々に……
次の日も
その次の日も
世界は何事もなく回っていた