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スレッドNo.7440

火の鳥  上原有栖

全てを喪った夜があった
世界から色が抜け落ちていった
空も地面も家々も
見つめる自分の掌さえも
灰を被ったようにみすぼらしかった

私はあてもなく歩いた
悲しかったからではない
この場所には未練があったのだが
ひとところに留まって居られなかったのだ

道を進み 坂を登って
ひび割れたトンネルを抜けた
見えてきたのは灰色の丘
色素の無い葉がさらさらと揺れていた

なだらかな斜面には
一本の枯れ木が生えていて
枝に火の鳥が止まっていた
世界は色を忘れてしまっていたから
翼に輝く飾り羽根も白黒だったが
紛れも無くそこには火の鳥がいた

甲高い鳴き声に魂が震えた
音が歌となって
冷えていた心を包んでいく
今までに貰ってきた愛情を思い出していた

鎮魂歌を聴きながら
次は此処に咲く花になりたい
そう願った私の意識は
細く 長く
糸のように伸び
最後は見えない線になって消えた

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