そこにある壁 石川ぼうず
壁は変わらずそこにある
ぼくは見上げる
そして
ぼくは壁の向こうに
早く行かなければと焦る
壁の向こうにいるのが当たり前
壁に手かけても
あちら側は遠い
壁の向こうでは平等を唱えるが
ぼくが乗り越えることを拒む
おまえの居場所はここにはない、と
向こうからの視線が
白く突き刺さる気がしてたまらない
言葉にならない声が
身体に響く
「何度も試せばいい」
向こうの人は平気で言う
そのたびに
ぼくの形が崩れる
心が少しずつ削られる
形が崩れ
削られたぶんだけ
どんどん透明になっていく
ぼくの心は
向こうの形に合わせられない
子供のぼくは
本当は向こうに行きたくないと
壁を見上げている
誰もそれを壁と呼ばない
ただそれは普通という
壁は変わらずそこにある