海岸線 上原有栖
海岸線の先には何がある
重なった白波の向こう側を
どうしても見てみたくなった
夜明けのハイウェイ
境界が曖昧になる時間が訪れる
海からやってきて
再び還っていく生命
いまは陸で息をしているが
手のひらには
水掻きの記憶が残っていた
カーステレオから流れてくるのは
一世代前のミュージック
流行は回帰する
昨日の新しいものは
今日は少し古くなってしまった
潮騒の音を追いかけて
足はいつの間にか尾鰭へと近付いていく
首筋に張り付いた
鱗の欠片に触れたとき
肺呼吸は前より下手になっていた
海に呼ばれて飛び込んだ
苦しみをシートに押し込み
自由になった一匹の魚
身体を翻し深く沈んでいくさなか
新しい鰓が泡を吐き出して笑う
残された車のハザードランプが
旅立ちを見送るように瞬いていた