赤い花 暗沢
アカバナ アキバナ
ショウジョウバナ
赤い花二輪 街路樹の傍に
控えてた
陳腐なイメージこそが恐ろしい
地獄とか
シニンノハナ シンダモンバナ
ジゴクノハナ カエンバナ
この赤裸々なまで鮮やかな赤は
内側へと収斂する鮮やかな赤は
毒婦の爪か 艶紅か
キツネノユリ ヘビノトウ
シビレノハナ ドクシュバナ
微細極まる一条ごとは
扼する指の如くであり
朝靄の帳を介しつ誘う
此岸より 彼岸へと
アキノハナ アメフラシ
ユウダチグサ ケムリグサ
点々と靄に灯り連なる
赤のイメージは手招く
向こう側から 嫣然と
彼岸より
メクサレバナ ムシトリバナ
オヤシネコシネ オヤコロシ
あまねきとこしえなる赤を摘め
忘れ草へと帰すことのない
それら曼珠沙へと手を伸ばせ
犀利たる赤へと愛撫せよ
花の赤は肉を切り 裂けた肉は血を滴らす
爛壊せよ
腐した肉よ 余すところのなきよう
花へと託せ
赤へ
舌先を撫でるは 赤い花
花の赤はつめたく 苦い
曼珠沙華 抱くほどとれど 母恋し(※)
引き留めたのは、古い一句
いつの日にか、目に留めた。
もう母は身罷ってしまっているのだが。
そうだ!身罷っていたのだ。私の場合は
次はもう無いかもしれない。
ホトケバナ(※2)
※(中村汀女『汀女句集』より ※2他、詩中のカタカナ表記の名詞は「イメージ」除き、全てこの句中の季語である花の別称となります。)