部屋 aristotles200
上下左右、後が鏡になっている
前も鏡で扉
継ぎ目の間にLED照明
鏡部屋を自作した
中に入り、明かりを付ける
無数に自分と一緒に
360°鏡の世界が広がる
安堵の息を吐く
ここに異物はいない
自分も、たくさんの自分の
一つでしかない
涙が溢れ出る
生身の身体の臭い
暑さ寒さ
空腹、排泄の惨めさ
うんざりだ
ここが居場所だ
いつの間にか
眠ってしまったようだ
深くため息をつき
鏡の扉を押す
びくともしない
ん?
力を込める
コンクリートの壁のような感覚
後ろを押す
カチャ
別の
鏡の部屋が続いている
こ、これは
鏡の、世界に
鏡に映る
無数の自分が歓喜している
もう、苦しまなくていい
深呼吸をして
床で寛ぐ
そういえば
喉が渇いている
お腹もすいた
今、何時だろう
私自身と
向こうの日常は
続いているらしい
立ち上がり
鏡を叩く
安物のプラスチック製の鏡が
びくともしない
天井を
押す、開いた
上によじ登る
痛っ、右脚を切った
鏡に血がたれる
やはり
鏡の世界が広がっている
床の血が
無数に見える
生身のままで
来てしまった
恐怖が心を占める
パニック、泣き叫ぶ
鏡の自分たちも泣き叫ぶ
落ち着こう
呼吸を整える
床の血を見る
そうか
鏡を覆えば
この空間は破綻する
元に戻れるかも
鏡の扉に
左脚を押しつける
鋭い痛み、血が床に垂れた
床の血を
手のひらで広げる
まだまだだ
血が足らない
⋯⋯
上下左右、前後が鏡になっている
全て、血を擦り付けた
血を流し過ぎた
意識が
遠ざかる
カチャ
正面の鏡が
開く
笑顔を浮かべた私が
立っている
次々と
鏡の中の鏡の扉が開いていく
血まみれで
一人、横になっている私を
全員が見ている
表情が
一瞬で変わる
邪悪な
血を求める
肉食獣のような笑顔に
全員が
この空間にいる
囲まれている
✳
下を向く
腹の中から
暗い、怒りが湧き上がる
全身に満ち渡る
違う
違う、違う、違う
大声で叫ぶ
お前たちは間違っている
肉食獣の顔をした
私たちは戸惑っている
顔を上げる
偽者たちよ
消えろ
ピシッ
次々と
私たちは割れていく
恐怖の顔を浮かべ
粉々になる
✳
上下左右、前後が鏡になっている
幾重にも
広がり続ける鏡の世界に
一人、立っている
そう、ここが
私の世界だ