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スレッドNo.7558

還るときは来ていない  光山登



水、だと思ったものはただの砂の雫だった。

「この世に新しいものは何もない」

遠い昔に生きた賢者の言葉がリフレインする。
この砂に覆われた最果ての地で
僕がこのまま干からびるのも、何度も繰り返された事象に違いない。

僕の身体はもうじき「いっさい」のもとへ還る。
それは時間と空間を与えられたことにより、一時的に「いっさい」から切り離されたに過ぎない。
与えられた時間が終われば、「いっさい」に戻るべきときが来る。


けれども、脳裏に浮かぶのは仲間たちの声。
恩師の優しいまなざし。
そして、この世で愛し尽くした人の笑顔。

姿形は変わっても、いつかはまたどこかで巡り会える。
それがわかっていても。

ーー僕はこの世でこの身体であの人に触れたいんだ!

僕は砂の上に右手の爪を強く立てた。
まだ身体は動く。

ーーまだ還るときは来ていない。

僕は歯を食いしばって砂の上から立ち上がった。
それから再び水を求めて確かな足取りで歩き始めた。

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