神話(シン・ファ) 上原有栖
かつて世界はずっと狭かった
獣に怯える夜が長く続いた
今よりも食べ物は少なく
冷たい風が身体を引っ掻いた
われわれは粗末な家で寄り添い
温めあって生き抜いた
動物や木々たちと
今よりもっと近しかった時代
生活に光が溢れていた
見えない神様がそこかしこで踊っていた
遠くの森の向こう
稲妻の山のずっと先から
知らない人々がやってきた
黒い骨を纏い違う言葉を話す者たち
彼らは私たちより多くを知っていた
われわれは栄えるために選んだ
残りは捨てた
最後まで残った欠片を物語にして
老人は子供たちに伝えた
このような出来事が
幾千年
あらゆる場所で繰り返された
生き残るためには仕方がなかった
伝承はこれからも続いていく
われら一人一人が紡いできた
あの日から始まったのは 神話