MENU
2,328,799

スレッドNo.7562

燻る  ゆづは

錆びついた水道の栓を回すと
青いポリバケツの底で
水が賑やかな声を上げる
ぬるい水しぶきが
黒いスカートの裾を重くした

雑草を踏みしめて歩き
墓石の前へと辿り着く

柄杓の水を傾ければ
ジュワリと音を立てて
御影石に張り付いていた
真夏の翳りが溶けてゆく

風が吹くたび
線香の火はかき消され
指先は灰を纏った

手を合わせ 目を瞑る
唇からこぼれ落ちる
透明な言葉は 
土の底へと沈みゆく
 
木々がざわめき
葉擦れの向こうに
いつかの笑い声が混じる
柔らかな光が
睫毛の先で揺れていた

一礼をして 歩き出す

スカートの裾は乾き
あの指先だけが
まだ
燻っている

編集・削除(未編集)

ロケットBBS

Page Top