燻る ゆづは
錆びついた水道の栓を回すと
青いポリバケツの底で
水が賑やかな声を上げる
ぬるい水しぶきが
黒いスカートの裾を重くした
雑草を踏みしめて歩き
墓石の前へと辿り着く
柄杓の水を傾ければ
ジュワリと音を立てて
御影石に張り付いていた
真夏の翳りが溶けてゆく
風が吹くたび
線香の火はかき消され
指先は灰を纏った
手を合わせ 目を瞑る
唇からこぼれ落ちる
透明な言葉は
土の底へと沈みゆく
木々がざわめき
葉擦れの向こうに
いつかの笑い声が混じる
柔らかな光が
睫毛の先で揺れていた
一礼をして 歩き出す
スカートの裾は乾き
あの指先だけが
まだ
燻っている