永遠の時間 小林大鬼
帰宅したあなたは
私に軽く挨拶した後
駆け寄る子供達を
言葉少なに諭し
食卓では皆で祈りを捧げ
あなたは食事を分かち合う
さん付けで妻から
呼ばれていたあなたは
潔癖で頑固で実直で
あなたの言うことには
家の誰もが従った
あなたは子供達に
言われるままに鬼になり
豆まきして遊んだ後
夜遅い時間になり
あなたは鹿島神宮駅まで
車で私を送ってくれた
クラシックピアノの曲が
静かに流れる車内で
昔の自分も似たような音楽を
聴いていたこともあなたに語った
純粋なクリスチャンで
英語教師の八木重吉のことも
あなたは前から知っていた
生前誰一人として
詩人と知られることなく
儚く短い人生を終えた
殉教者の後を追うかのように
あなたの訃報を人づてに聞いて
奥さんとの連絡が急に途絶えた理由も知った
神と聖書を愛した八木重吉は
早く天に召されたいと望んでいたが
家族を残して逝くあなたは
何を思って旅立つのだろう…
夜の洗面台で子供達と
歯磨きする合間に
あなたが飲んでいた粉薬も
今では妙に気にかかる
最初で最後の他愛ない会話
あなたの断片が私に降る
明るく静かな節分の夜
眩い月が夜空を照らす…
優しく微笑む天使のように
物静かにあなたは
いつも家族を見守っていた