8月 4日(火)~ 8月 6日(木)ご投稿分、評と感想です。 青島江里
◎8月 4日(火)~ 8月 6日(木)ご投稿分、評と感想です。
☆頬杖ついて 三津山破依さん
頬杖をつくということは、物思いにふけるという姿が浮かんできますが、この頬杖、読後、例えば「ペペロンチーノ」では、頬杖をつくという所作の奥に、単にボヤっと考え事をしていることとは少し違う、日常の、言うに言えない、ちょっとしたストレスや、自分の中にだけ閉まっておかなければならない、だけど、誰かにぽそっと言ってしまいたいモヤモヤを映し出しているように思えました。いわゆる、日常の裏側のちょっと奥のような。「ペペロンチーノ」で少し気になったのは、前半、「僕は独りぼっちで座っている」となっていますが、後半では「君」という存在が登場します。この「独りぼっち」が「君が去ったあとの部屋」なのか、「誰かと一緒にいてもどこか孤独を感じる気持ち」なのか、もしくは「思い返している時間」なのかが少し曖昧です。前半の孤独感と後半の温かい思いとの繋がりをひとこと補強することで、更に詩の奥行きが深まるように思いました。
「ハンバーグ」でも、自分では似合わないと思いつつ、「あなた」が選んでくれたからと、おとなしく着用したり、ハンバーグの鶏軟骨を砕いたものを混ぜる割合を相手に気づかれない程度にしたりしています。日頃のプチストレスを、愚痴にならず、言葉巧みに自分なりの「頬杖論」を立ち上げて、サラッと表現してしまうところ、難しすぎず、すぐに作品の情景が浮かび、アニメや漫画にも繋がっていけそうな、ちょっとしたライトノベルの一節のような雰囲気も感じられ、誰でも親しみやすい作品になっていると思いました。
「ペペロンチーノ」の作中の「少しおしゃれな量」では、「足りない」とは違う、心を込めてつくってくれた相手への配慮と、ちょっとした、言いたいけど言えない心の裏側が同居していて、その後には、追い打ちをかけてくるような「こっそりカップラーメン」がきて、とうとう、くすっと笑ってしまいました。しかも、日常アルアルなので、変に納得させられてしまうところも魅力的でした。人間味が溢れていて、あたたかい読後感に包まれました。
二つのお題を読んで、ひとつの意味を鑑賞する作品の組み立て方もユニークですね。今回は、ふんわりあまめの佳作を。
☆休日の午後 埼玉のさっちゃんさん
最近、手っ取り早く稼ぎたいから強盗したとか、お金を手に入れるために人を騙したり、隣の芝は青く見えすぎて、妬んで相手を事件に巻き込んだりするニュースを耳にすることが増えて、心が痛みます。大金持ちになることだけがしあわせってなんだろうかと。そのような中、「休日の午後」のような作品に巡り合うと、心がホッとします。人間の果てしない悩み。山あり谷あり。自身に悩みが生じても、それはみんな同じように悩みながら生きているんだって言い聞かせることができる、詩行から香って来る心の余白。悩んで荒れる心の内海に凪を届けてくれそうです。
とてもストレートで、特別なレトリックもありません。ですが、最終連の一行がとても秀逸でした。
「コーヒーでも飲もうかな」
「自分の内側に、心の余裕」を、見事にこの一行で言い表してくれました。心が渇いたり、荒んだりした時、考えすぎてしまって周りが見えなくなりがちの時、誰にでも、すぐに手が届きそうな言葉。ほんの数ミリ、数ミクロンになるかもしれませんが、明らかに、息詰まる気持ちに、一筋の新鮮な光を届けてくれそうな気がしました。この一行が光ることで、純粋な気持ちを綴った詩にとどまらず、うつむきがちな日常をどうにか幸せの方向に近づけたいという、小さな希望の詩にもなり、さりげないメッセージ性のある作品にもなっていると思いました。好きなことに向かい合えること、穏やかな時間を愛すること。この時間の背景を「休日の午後」だとすることで、より一層、ほんのりとした幸福感が読後に広がりました。
「泣くよりも笑って過ごしたい」・・・・・・まったくそうですよね。佳作を。
☆師走の権現山 小林大鬼さん
旅先の風景、「湯田温泉」「権現山」「熊野神社」に、「中原中也」の生涯を重ねて、文学的情景を表現する前半の展開、そして、「夕暮れ迫る湯田温泉」「暮れかかる師走の空」といった時間経過や季節感の描写は、読み手に、映画のワンシーンのように旅の情景を広げてくれました。湯田温泉は、親戚の結婚式で訪れたことがあります。とてもよいところですよね。
前半の文学的情景描写からの、財布を失くしてしまったというアクシデントへの展開表現は、読み手を見事に驚かせました。ただ驚かせただけではなく、「中也の思いに触れる余裕なんてなかった」という本音に対比され、かなり人間臭いものを感じさせてくれました。この、「それ(中也の思い)を考える暇は自分にはなかった」という表現については、作中に二度出てきます。個人的には、「中也に思いを馳せているのはここまでだった」や、二度ある部分をどちらか一つに絞ると、文学的情景と現実のアクシデントの場面転換がより一層はっきりと伝わるように感じました。
財布を探している描写についてですが、知らない人が読んで、熊野神社が権現山の頂上にあるのか、それとも、権現山の頂上に行く途中にあるのかなど、位置的なものを、もっとはっきりさせることができると、焦って元来た道を必死に戻る動きがより分かりやすくなると思いました。
ラストの「白い狐が跳ねていた」という表現はとても美しく、湯田温泉の「白狐伝説」(傷ついた白狐が湯で足を治したという伝説)を思うと、焦りと失意の中に、どこか幻想的で救いのある余韻を感じさせてくれました。必死で探し回って疲れた足元にいたわりを授けてくれそうな、そのようなことまで感じさせてくれました。
文学的情景から切り替え、人間的なものを大きく映し出した展開、そして、ラストに幻想的な余韻を広げるストーリー性は魅力的でした。今回は佳作半歩手前を。
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四十度越えの日々や豪雨、多発的、そして、観測史上初の進行をする台風など。年を追うごとに目立ってくる自然破壊に大気汚染。人類は自然の大切さを後回しにする目先の利益に走りすぎじゃないかな。世界の気候が確実に変わってきているなと感じずにはいられない今年の夏。
まだまだ暑い夏。どうかご自愛ください。そしてご安全に。
みなさま、今日も一日お疲れさまです。