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スレッドNo.7592

同じ時間の中で  光山登

不満足な豚たちが囲いの中でいっせいに駆け回っていた。
互いに罵りながらも離れられない彼らを僕はじっと眺めていた。

僕はソクラテスにはなれない。
だから不満足なソクラテスにも満足したソクラテスにもなれなかった。
ただのまるまるとした豚だ。
僕もかつては狭い囲いの中で暮らしていた。
僕だけが囲いの外を自由に動き回ることができる。

(僕は豚だけど文字を読むことが出来る。)
ある日、人が書いた最高の本を読んだ。
「己を知り、己に満足せよ」

僕のおなかにはぶよぶよの肉がついている。
けれども、ただそれだけのことだ。
僕が満足することを妨げるものではなかった。

今、僕の心は晴れやかに鎮まりかえっている。

囲いの外から不満足な豚たちを眺めていたら、
ふとまた囲いの中に戻りたくなってしまった。

僕は自分に満足してしまったから、いまさら群れに戻ることは出来ない。

不満足な昔と、満足した今。 
どちらがよかったか、僕にはわからない。

たしかなことは、不満足な豚たちも、僕も、同じ時間の中に生きているということだけだった。

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