クサヒバリの鳴く夜に ゆづは
い草の匂いと蚊取り線香
網戸を通り抜ける
湿った八月の風
あの頃の夜は
とてつもなく暗く 深かった
雨戸の隙間から
畳を突き刺す白い月光
柱時計が夜の長さを測り終えると
光の筋を伝うように
フィリリリリ
フィリリリリ
夜の静寂を震わせ
耳もとを撫でる細い音
暗闇の奥で止まない振動
ひそやかに息をして
ピンクのタオルケットのなかに
身を隠していた
あれから幾度
夢から醒めただろう
音の主がクサヒバリだと
知った今も
怖いはずのないそれは
あの小さな子ども部屋で
鳴り続けている