影 aristotles200
無人の街を
たくさんの影が
歩いている
人間は
何処にもいない
遺されたのは
影だけ
昼は、太陽のもとに
くっきりと
夜は、月明かりに
うっすらと浮かび上がる
音ひとつない静寂の中で
影だけが動き回っている
街が、街であったと証している
夕暮れの時
街は真実を現す
何もない
ただ、荒野が広がっている
✳
月明かりの中
死者の記憶とともに
建物や駅は甦り
道には
たくさんの影が往来する
誰も気づいていない
朝焼けの時
再び、街は荒野に戻る
東雲色が
世界を覆うとき
影は死者に戻る
空を切り裂く
白い閃光が
一瞬で
街も、人も
消滅させてしまった
超高温で溶けた
緑色のガラスが
地表を覆っている
この星の
誰も気づくことはない