鐘 aristotles200
古い時計塔の鐘が
鳴り響く
時刻は12時34分
クロノスの石像の上にある
時計塔は
毎正時に鳴ることがない
一日中、沈黙する日もあれば
狂ったかのように鳴る日もある
誰も苦情は言わない
この辺りに
鉄道の駅ができてから
こうらしい
革命の混乱の中で
公国から
密かに持ち込まれたとか
石像と
時計塔は
聖域に封じられていたとか
鐘が鳴り響いている
石像と目が合う
閉じていたはずの両目が
赤い光を放っている
吸い込まれるような感覚
鐘の音が止まった
無音
息を呑むような静けさ
何かが
起きている
腕時計を見る
秒針が止まっている
時計塔を見ると
周囲の
動きが止まっている
片足を上げたままの人
会話中で開いたままの口
全員が
マネキンのように動かない
空を見ると
鳩が止まっている
自分だけが
動いている
クロノスの石像を見る
目は
閉じられている
戻れない
起こさないと
像に登り
鐘を
拳で叩く
くぐもった鐘の音がする
向こうは
鳴っている
ボーン、ボーン、ボーン
拳を血まみれにして
叩き続ける
✳
石像の上にある
時計塔は
砂時計に変わり
砂は
すべて落ちている
もう
戻れない
やがて
くぐもった鐘の音も
鳴り止んだ
沈黙が
世界を包み込む
永遠に