石鹸と湯気 朝霧綾め
お風呂に入って
白い石鹸で
身体を洗っているとき
過去も今も未来も
ぼんやりと湯気でかすんでいるので
私はぼうっとただ微笑むだけ
ぼうっとした頭で
悔しかったことや、嬉しかったことを考えても
石鹸の泡が
ふわふわもこもこ 覆い隠し
隠された分だけ忘れてしまう
曇った鏡に映る ぼやけた輪郭を見て
ああ、私はきれいかもしれない と
眠たい頭の隅で 声がつぶやく
打ち消すのも面倒なのか
きれいと思って 眺め続ける
お風呂から出た
洗面台の鏡は曇っていないのに
眠たい目でゆっくりと ウインクしてみる
濡れた髪から水滴がしたたって
なかなか美人かもしれないと思った