うるてぃま 上原有栖
どこのだれが話していたか
ここではない世界の昔話
四方を巨大な神様たちが支えていた世界
長い足で地面をふみしめ
逞しい腕で天をおしあげた
どんな顔をしてらっしゃるのか
みしるしは雲よりはるか上に在って
だれも見たことは無いのだった
やがて永い冬がやって来た
世界は前よりもだいぶ白くなり
特に北方は氷に覆われてしまった
司る神様は寒さに震えていた
踏ん張る足もとは霜柱であかぎれ
伸ばした手のひらは雪でしもやけ
しだいに支える腕にも力が入らなくなってきた
うーん うーん もうだめだ
とうとう北方の神様は
堪えきれず片膝をついてしまったと
天をおさえるバランスが崩れてしまい
気がついた三方の空から声がする
だいじょうぶ しばらく休んだらまた立つぞ
北方の神様は答えたものの
寒さで身体がこわばって
動きたいのに動けない
次第に地面についた膝が
凍りだしてしまった
それから
北の方角からの声は途切れてしまった
他の神様たちもそれぞれ動けず
そのまま今まで時間が流れていったとさ
北の国へ行ってみるといい
夜空に輝く星がはっきりと見えるだろうさ
あれは神様の大きなお顔が
私たちの見えるところまで近づいているんだ
寒くて空気が澄んでるからね
みしるしが拝めるんだよ
むかしむかしから
この世界の四方を支える神様たち
今ではほとんど━━━忘れられてしまった
ただ北方を司る一柱をのぞいて
その名前は
『うるてぃま・とぅーれ』
最北の地に佇む神