一つ aristotles200
通勤路
駅でエスカレーターに乗る
上に昇っていく
出口近く
無意識にハンドレールを離す
最初に戻っている
エスカレーターに乗っている
やや混乱
気のせいだろう
前を向く、意識を集中する
出口近く
無意識にハンドレールを離す
最初に戻っている
やはり、繰り返している
いいだろう
左側に移り
階段を一つずつ昇っていく
最初に戻っている
エスカレーターは
上り続けている
無言のまま
白いYシャツに黒のスラックスの
前の人の服を触る
そのまま出口へ
前の人ごと最初の位置へ
服を触られる感覚に
前の人も
パニックになっている
変だ
後ろを振り返る
全員
自分が振り返っている
深呼吸
落ち着いて
ハンドレールを掴む
前の人に話しかける
すいません
白いYシャツに黒のスラックスの
全員が
前の人に話しかけている
一つ、判明した
このエスカレーターに乗っている
全員、自分らしい
どうすれば
ループを止められるのか
わからない
目を閉じて
幼い頃
祖父に教わった呪文を
唱える
寿限無、寿限無、五劫のすり切れ
ポンポコリーの長久命の長助
全ての私は
一つに戻れ
遠くで雷鳴がする
間違えた
✳
何ごともなかったように
エスカレーターを出る
白いYシャツに黒のスラックスの
私が
次々とホームへと向かう
ターミナル駅
全てのホームに
溢れかえっている
✳
駅の外では
巨大化した
白いYシャツに黒のスラックスの
私たちが
立っている
ホームを覗いている