当たり前だった夏 石川ぼうず
「過酷な労働環境及び待遇に抗議します」
確かにそう言って扇風機は動かなくなった
しばらくすると部屋の中は高温多湿
扇風機がないだけでこうも違うのか
僕は扇風機のご機嫌を取るため謝った
なんだかんだ理由をつけ掃除を後回しにしたこと
無理やり首の向きを変えたこと
毎回、足でスイッチを押したこと
使わないシーズンは邪魔もの扱いしたこと
思い返せばひどい仕打ちの数々
僕は扇風機に対する態度に心から反省した
それでも扇風機は黙ったまま
考えてみると小さなころから一緒に夏を過ごしてきた
やることが無い時、指で羽を止めて遊んだ
回る羽に向かって「あー」と話しかけた
そうだった
夏の間、ずっと僕を見守り遊んでくれた
それをクーラーばかりに感謝して
動かなくなって初めて大切さに気付く
「きれいに掃除をしよう」
持ち運ぼうとしたとき……
コンセントが抜けていることに気づいた
「この野郎! コンセントだったのか」
扇風機を蹴っ飛ばした