名も知らぬ鳥 ゆづは
明け遣らぬ空
無風の闇の中から
鳥の囀りが漏れ始める
庭の木々は
密やかに吸い 吐き
闇の襞を震わせている
「あれは何」と呟く私の前に
輪郭のない背中で答えるあなた
ひとつの咳払いを残して
あなたは夜の向こうへ消える
置いてゆかれたのではない
私はここで
暗闇と同化してゆく
鳥たちの交わす声の
ぞっとするほどの健やかさ
完璧な構造で編まれる
愛の旋律の その容赦のなさ
名も知らぬ鳥よ
薄明のなかに
ただ在るものよ
舌を失くしたこの口に
永久(とこしえ)の世の
乾いた言葉をこぼしておくれ
空の皮がゆっくりとめくられる
名前を奪われた私が
沈黙の洞の奥で
ただ細く喉を鳴らしている