間違い aristotles200
紫色の靴が
嫌い
そばに
紫色の靴を履いた人がいると
鳥肌が立つ
見ていなくても
分かる
背筋が寒くなる
息も苦しい
世の中に
紫色の靴は
存在してはならない
原因は?
分からない
小さい頃は平気
ある日、突然
全身に拒否反応が起きた
鞄には
黒色のカラースプレー
現金の入った封筒
今朝も
一人、電車にいた
口を押さえ
天井を見ながら近づく
スプレー缶を出し
プシュウウ
悲鳴が上がり
いつもの通り警察沙汰に
土下座
分厚い封筒を差し出す
ある日
テレビを観ていたら
タレントが
紫色の靴を履いている
プシュウウ
テレビは観れなくなった
しばらくすると
紫色の靴が流行に
電車では
複数の人が履いている
両手にスプレー缶を持ち
奇声を上げる
片っ端から
紫色の靴を黒くする
直ぐに
周りに取り押さえられた
目の前に
紫色の靴がある
冷たく暗い
水の中に
沈んでいる感覚
い、息ができない
うごあああ
血走った目
よだれを垂らしながら
やめてくれ
紫色の靴は
駄目なんだああああああ
気を失う
乗客が話している
何なんですかね、この人
あ、警察の人きましたね
ピク
身体が、震え始める
ぶるぶる、ぶるぶるぶる
ぶるぶるぶるぶる
窓ガラスが割れ
車内が歪んでいく
プチャ
ペチャ、ポチャ
乗客が
次々と破裂していく
都心を
透明な膜が覆う
ドオオオオン
高層ビルや
歩道橋、駅が吹き飛ぶ
✳
気がつけば
荒野で一人、伏している
目の前に
紫色の靴が転がっている
見つめる
そっと靴を履き
微笑む
世界は
その存在を許していることが
間違っている
紫色の靴を履いたまま
廃墟の中を
軽やかに舞う
陽光が
私を照らし
影が後を追う
マイム、マイム、マイム、マイム
マイム、マイム、ベッサッソン
(水、水、水、水、喜びのうちに水を)
靴音と歌が
廃墟に響いている