盲ていない友人 長谷川ひかり
やはりカーテンを閉めるようにサカ区に住んでいた俺が8つの頃の畳部屋とおなじふうなすがたで食事をしていた。
俺の名前と兄貴の名前を母親は混同する。知人には丁度よい話。でも吐き気がしながら話した。
レトルトのボロネーゼパスタが旨い。
お母様を呼ぶ
お母様は来ない
一人暮らしだから来ないさ
お母様
お母様と呼ぶように
彼女から言われたか父親から言われたか
考えながら劇薬を使ったりもした
それは今も思い出せない
兄は生きていても、もういない
あれさあどっちに言われたんだっけ
お兄様 なんちゃって
と言ったとき背後で犬がわらった
俺が髪を乱して歩くことは
犬が走り出すこと
延びたリードがちぎれる程
犬はいつも俺を見ている
犬は夕陽によって
きれいに見えると
仕事先の人が
言うのだ
俺のうでの先にいる犬は
甘い香水を口から放った
犬はこう言った
早く病院に行け
だから私は誰よりも____________
レトルトのミートソースを湯せんしていると玄関のチャイムが鳴った。
犬じゃない。ステッキを携えた斜視の男がやって来て
おはよう と言った。