熟れた李(すもも)を齧った唇は、火照ったように染まる 上原有栖
手のひらに載せられた李
薄皮のやわさ 内に詰まる果肉
乳飲み子の握りこぶしのよう
甘い香りはまさしく熟れている証
中華では果物のことを
水菓(シュイグオ)と呼ぶ
あなたの口が発した響きは
遠くの異国を旅して伝わった旋律に
似ているのだった
焦らさずに
一息に齧ってほしい
歯型をつけて 果汁を滴らせて
種を覆う果肉を舌で包み込んで
よく味わって
切れ長の瞳は何を語る
眼差しの表情(いろ)は
衝動(おとこ)を刺激する
果実を頬張るだけで
魅惑を振り撒く女性だ
瑞々しい唇は
果肉の紅色に染まった
火照った頬と一緒 からくれないの宝石
熱にうなされているのは此方なのに
勘違いも甚だしいけれど
わたしは蠱惑に囚われた蝶も同然