盲いた友人 長谷川ひかり
カーテンを開けたら殺される。
だから私はカーテンを開けない。
毎日誰かしらが、私の部屋に入ってくる。そして文句をつけて出ていく。
「薄暗い」
幼い頃母に言われたのだ。カーテンを開けたら殺されると言われたのだ。
今日も誰かが入ってきた。
友人だった。彼は盲いている。
外に出ないのかと彼はきいた。
出る日もあるよ。
私は絵を描いて生活していた。
毎日、正義がこの部屋を出入りしているんだね。うん。
彼は私に病院へ行くように勧めた。
私は今、病院で過ごしている。
毎朝、白衣を着た男や女がやって来て勝手にカーテンを開けるのだ。
私は叫んだ。叫ぶことが救いとなるのだと思って。
最初の数日間は大部屋で過ごしたが、やがて個室が用意された。他の患者にも、あなたにも我々看護師にも辛いからと院長は言った。私は、彼は優しいなあと思った。
カーテンが勝手に開けられることは無くなった。私は普通に暮らすことができている。こんな場所に来なくとも普通に暮らせるし、街へ出かけることもあるのに。
あぁ夜は怖くて暗くて不安で希望が無いけど、
確かに美しいのだ。
美しいはずだ。
ある日、盲いた友人が見舞にやって来た。
彼も私を心配する人間なので私は孤独を感じてしまうが私の理解者だと思う。
私たちが初めて出会った日、その友人は私に向かってこう言った。
私は目が良くないです。ほとんど見えないです。色というか、明るさはなんとなくわかりますので、それが、私の世界です。
私は彼の緑色の瞳を見ていた。
あそこに、あいつの世界があるんだ。
彼は、近いうちに食事でも行こうかと誘った。
病院の庭まで友人を見送った。
私は、あの優しい院長の顔を頭に思い浮かべていた。病室に向かって歩く私の体はオレンジ色のガラスのように染まっていた。