触れる 樺里ゆう
人間がなぜ くちづけをするのか
わたしには わからない
人間がなぜ 抱きしめあうのか
わたしには わからない
人間がなぜ 手をつなぎ
なぜ 相手の首筋に頭を寄せ
なぜ 誰かに触れたいと思うのか
わたしには わからない
わたしは恋をしないから
愛しさや性欲で以って 誰かに
触れたいとも思わないから
くちづけなどして 何になるのと
何が面白いのと
思っていた
でも考えるうちに
人間は 言葉が充分でない時代の方が長かったじゃないかと
思い当たった
人間がまだ ラミダス猿人だったころ
言語はなく
地球にネアンデルタール人がいたころ
文字はなかった
たぶん 彼らは
声で 呼びかけあい
互いの腕を 撫でて
じっと 見つめあい
互いの髪に そっと 指を通す
そうして 恋しさを
伝えていたんじゃないか
それなら
現在の人々が くちづけをするのは
言葉を持たなかったころの名残り
この世のすべての
くちづけをする人たちよ
幸せであれ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
大変ご無沙汰しております。不定期ですが詩作と投稿はこれからも続けていきたいと思いますので、
ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。