百年の眠り ゆづは
お気に入りのフランス菓子店で
洒落たパピエに包まれて
私のもとへとやってきた
ティーカップ
フランスを愛する店主が
ひとり旅の途中で出会ったという
ピンクの小花が
レースのように編まれたアンティーク
食器棚の一番上で
ときめきを纏ったまま
長いこと
眠りについていた
そっと
ガラス戸を開けて
色褪せないあの絵柄を
取り出してみる
触れれば折れそうなほど
華奢なハンドル
縁にやさしく吹き付けられた
翳りのある金彩
ひたむきに時を重ねた
細かな擦れやシミに
かつてこの器を愛した人の
手のぬくもりが
ひそやかに息づいている
行ったことのない薔薇の庭も
遠い異国の街角も
指先でその縁をなぞれば
紅茶の香りがするようで
手のひらに
その重みを受けとめ
温かいお湯を注ぐ
百年の眠りから
目覚めるように
いつかの夢が
湯気となって立ちのぼる