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スレッドNo.7733

百年の眠り  ゆづは

お気に入りのフランス菓子店で
洒落たパピエに包まれて
私のもとへとやってきた
ティーカップ

フランスを愛する店主が
ひとり旅の途中で出会ったという
ピンクの小花が
レースのように編まれたアンティーク

食器棚の一番上で
ときめきを纏ったまま
長いこと
眠りについていた

そっと
ガラス戸を開けて
色褪せないあの絵柄を
取り出してみる

触れれば折れそうなほど
華奢なハンドル
縁にやさしく吹き付けられた
翳りのある金彩

ひたむきに時を重ねた
細かな擦れやシミに
かつてこの器を愛した人の
手のぬくもりが
ひそやかに息づいている

行ったことのない薔薇の庭も
遠い異国の街角も
指先でその縁をなぞれば
紅茶の香りがするようで

手のひらに
その重みを受けとめ
温かいお湯を注ぐ

百年の眠りから
目覚めるように
いつかの夢が 
湯気となって立ちのぼる

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