感想と評 9/18~9/21 ご投稿分 三浦志郎
1 aristotles200さん 「終結の地」 9/18
ちょっとヘンな話から始めます。意図的に好んで終電に乗り終点まで行く。駅構内、駅外を克明にリポートし最後は駅のベンチで野宿する、そんなシリーズYOU TUBEがあって、僕はたまに観るのですが、そんな体験がこの詩の前半の読みに役立っている気がします。もちろん作者さんの詩的叙述の方が数段、リアリズムを超越して幻想世界に入って行くわけですね。これらは手法として、まず実際の駅の佇まいを充分観察した上で想像を翔ばしてゆく。これらは作者さんが日頃得意とする想像力エリアに入っています。
ところで「*」以降、詩のトーンや環境が変わります。転進と言ってもいいかもしれない。作者さんがなによりそれを感じて「*」を置く。このあたりの息づかいの感覚は書き手、読み手共有できるところが素晴らしいのです。ここからは、作者さんが、さらに得意とする歴史・哲学・宗教的装いを纏って風景は進みます。荘重な雰囲気、啓示に従って、風景としての事物・人物が動き出すのです。
ここで大事なことを示したいと思います。この詩の中でA)「メギド~黙示録~ハルマゲドン」は繋がっている点です。もうひとつ B)「通勤客~スクランブル交差点~周辺の高層ビル」―これは僕の感覚では冒頭述べたYOU TUBE場面での始発と共に動き出す街と人々を想像できます。
AとBの繋がりの詳細は僕にはわかりません。ですが、AとB、想像上の交差点に終連でありタイトルの「終結の地」が占位するだろうことは想像できるのです。佳作を。
2 上原有栖さん 「熟れた李(すもも)を齧った唇は、火照ったように染まる」 9/18
以前にもちょっと触れたのですが、いやあ~タイトルの長さ、気に入りました。“たまに”こういうのがあってもいいですネ!
果物について考えてみると、その味わい、形状、性質的に女性性であります。この詩はそこから始まっている気がする。初連では李の一般性が提示されます。2連は一般性を残しながらも、「あなた」といった個別性を登場させる。その出し方の遥かな雰囲気はまた格別のものがあります。日本でも果物を「水菓子」と言ったりしますね。さて、3連以降は全て、女性と李との相対。表情をも交えた、これはひとつの官能世界。こういう言葉は優美~下品、どちらにも傾くものですが、ここでのフィーリングは果物を交えての前者。“そそりながらも”詩的に着地しています。李(すもも)といった、ちょっとマイナーな果物の採用も、非日常を狙いやすい詩には、なかなか良いですね。「蠱惑」がこの際ピッタリの言葉です。逆に男の「わたし」を蝶に例えるのはちょっと違う気がしますが……。上原さんにしては珍しい詩、それも大きいですね。佳作半歩前を。
アフターアワーズ(ショータイム)
「もももすももももものうち」―代表的早口言葉。
「桃李(とうり)もの言わざれども自ずから蹊を成す―桃や李は何も語りませんが、その味・魅力に魅かれ人々が訪れ、自然と道ができるものです」 (人間性の比喩 司馬遷 史記より)。俳優・松坂桃李氏の名前は、おそらく此処から来たと思われます。
3 長谷川ひかりさん 「盲いた友人」 9/19 初めてのかたなので今回は感想のみ書かせて頂きます。
この書きぶりに大変好感が持てました。
ところで、差別用語にならないように気をつけて書きたいと思います。この詩の主人公はおそらく精神障害があるのでしょうか。詩には「リアル~ファンタジー」両面ありますが、この詩は多少のファンタジーを含みながらの「リアル」と感じました。タイトルの人も“目の不自由な人”なのでしょう。そういった二人の邂逅です。盲いた人がどうして友人になったか、その来歴は明かされませんが、それはそれとしておきましょう。二人のやり取り、後半も続きます。見舞いにやってきます。二人とも障害者であることが想像されます。このくだり、とても静かで穏やかで美しくさえあります。
「病院の庭まで友人を見送った」―なぜか僕はこのくだりが一番好きです。ここは「私」の「彼」への優しさが溢れる構図です、風景です。一行置きも素晴らしい。なるほど、この詩は少し常軌を外した部分もあるのですが、そんな条件下でも、物語は自然に優しく流れているのが実感できるのです。冒頭書いた感想の所以です。不思議な感覚の詩ではあります。個性派のかたでしょうか?また書いてみてください。
4 相野零次さん 「愛の結晶」 9/19
なかなか面白いですね。アイデア賞的です。 とりわけ冒頭と2連はよく考えられていて笑えますね。それ以降、やや漠然としますが、読んでいきましょう。
愛とは本来、気持ち、思想、概念であって、無形にして実体がないのが常識とされてきましたが、ここでは一種、物質化され体系化され機関化されているように描かれます。たとえば、月のような、太陽のような、あるいはまた国際連合や国際保健機関のような。そこがまた個性にして面白いところです。終連が示すように個人レベルまで面倒見てくれるのは有難いことです。同時に冒頭・2連の感覚に回帰しているのも、結びとして良いと思います。愛をこんな風に描くのは相野さんならでは、と言ったところ。甘め佳作で。
5 月のサカナさん 「銀曜日の約束」 9/19 初めてのかたなので、今回は感想のみ書かせて頂きます。
詩のフィーリングが、どことなくペンネームをイメージできるものです。すごく詩的な書き方ができる人だと思いました。イマジネーションが豊かなのです。修辞において良いものをお持ちのようです。そういった長所が逆に足を引っ張ったかな? 「それは」以降、修飾句が多めに付きフレーズが伸びて行きます。出来れば、それ以前の簡潔さを維持すると、より統一イメージができたかもしれないです。「13月の銀曜日」。面白いですね。ゆえに、ここで止めたほうがいいです。「きっとね」は蛇足でしょう。ただし、評者としては好感の持てる一作です。また書いてみてください。
6 虹乃衣里絵さん 「肩書」 9/19
正直に書かれていて、そこが貴重であり好感が持てるのです。詩は裏も表も利害打算もなく、全くもってこの通り!そこがすこぶる良いです。そして自分が関わっている領域において、みんなこう思っています。だから100%共感でしょう。読み手として、この詩のスタンスを充分把握した上で、(あるいは、だからこそ)カウンター的なことを書いてみます。名刺を作る、(自分は詩人なんだ!)と自分に言い聞かせる。それは素晴らしい努力です。ところが一面で、それは肩書の重みによって、自らの創作力を圧迫することになりはしないか?といった危惧も生じそうです。5連目あたりに、そんな気配は感じるのです。しかし、まあ、それは枝葉。その願いは充分理解できるのです。“いつかは”願いが叶いますように、励まし風甘味佳作を。
7 月森うさこさん 「菊江という女性」 9/20
やや作風変えて、今回はリアル路線ですね。
祖父母と孫というのは、それなりに密接な関係なのですが、3連目「連れ子だから」が全てを物語っているように思われます。よく辛く当たられた。そういった家庭環境では文中「私」が一番辛い思いをするものですが、おばあちゃんの仕打ちにも耐え、そればかりか、おばあちゃんの隠れた側面、素顔もちゃんと見て来た。「でもね~」で上手くエピソードを繋いでいますね。案外おばあちゃんも優しく可愛らしいところもあったことが伝わってきます。「だから~」「だからね~」のバリエーション以降は結論的な現在の気持ちでしょう。今も健在なのかどうか、は不明ですが、どちらにせよ「私」の気持ちに変わりはないでしょう。文中は全く出て来ませんが、タイトルのみに実名が出て来るのがちょっと面白い。(何でもそうなんですが)こういう事情は個人差があるでしょう。この詩の場合の個人差は良い方向に働いて暖かい思いもあります。結果はこれで良かったのではないでしょうか。甘め佳作を。
8 じじいじじいさん 「すきとすき」 9/20
そうですねえ、同じ「好き」なのにだいぶ違いますねえ。この種別は大人でもありそうですが、子ども心を通じて、その違い、その不思議を上手く捉えて表現しています。この詩の主人公は女子でしょ?この「好き」は今までにはなかった、初めての感覚かもしれません。可愛いですね。「レンくん」という名前もいいですね。ちょっと変わっていて、それだけに案外ありそうな気もしてきました。よく考えられてます。「だから」と「だけど」だけで性質の違いを言い表しているのも上手いです。
「かぞくとともだちがすきはあったかいんだ
レンくんがすきはムネがくるしいんだ」
僕はこの行がどうにも好きで、とりわけ後者ですね。僕はこの連を最終にしてもらいたいけど、
無理強いはできないので、あくまで参考ですね。佳作半歩前で。
評のおわりに。
9月も間もなく終わりますが、けっこう寒くなるのが早かったり、雨が多く(関東レベル)、
ところによって冠水や土砂崩れ被害がありました。商店街や民家、学校などです。
今までそういった被害があまりなかった土地なので驚きました。
被害に遭われたかたがたに謹んでお見舞い申し上げます。 では、また。