それから aristotles200
先祖代々の会社を
整理し
定年を機に
兼ねてからの計画を実行する
石灰石だけは
無尽蔵にある
無人島を購入
ハンマードリル
せり矢とハンマー
ブルドーザーを運び込む
一人
ハンマーを振る
カンカンカン
1立方メートルの
石灰石を
無数に掘り出していく
島の中央を
ブルドーザーで平坦にする
タワークレーンを設置
中心に
1立方メートルの石灰石を
重ね合わせていく
そう
ピラミッドを自作する
余生
すべてを建設に費やす
人を雇い
建設工事が始まる
10年後
ピラミッド
らしきものが完成した
いや
まだまだだ
どんどん横に広げ
高く、とてつもなく高くしよう
持ち金、すべてを注ぎ込み
機材と更なる人を雇う
20年後
寿命は
尽きようとしている
機材を島から撤収し
雇った人を解雇する
中心の
秘密の部屋へ向かう
先に逝った
妻と娘の写真を
眺める
息絶える瞬間
点火
計算通り、通路は埋まる
無人島に
高層ビルほどの
ピラミッドが完成した
30年後
誰も由来を知らず
誰が造ったのかもわからない
ピラミッドがそびえ立っている
本土から眺めても
その巨大さは人目をひいた
40年後
国から
調査団が派遣された
建設され
70年は経っている
それ以外は
わからない
50年後
ピラミッドの下
奥深くにある
巨大な空洞の天井が
崩れ始めた
深夜
満月がのぼる中
ピラミッドは
一瞬で
地中に呑み込まれた
周囲の土地も崩れ落ち
噴火口のような
窪みしか残らなかった
やがて
潮は満ち引いて
海水が
窪みを満たしていく
それから100年後
岩礁に
波が寄せている
その海の底に
巨大なピラミッドがある
物語は
誰にも語られることはない
波の音
潮の匂い