'26年しょうねん 長谷川ひかり
僕は小旅行で夏の景色がうつくしいと
人気の南の諸島にいざ来た
ところが体が芯から冷えて
風で髪が頬にあたる感触が
かれ葉と歩道の擦れる様子とリンクするし
僕はコートの肩に雪を降らせていた
それで目を細めて捕らえられる位の距離に
南国の静かな海を見ていた
もう少し早くに(こんなに寒くないうちに)
来られたらよかったと空港で思った
でも70年前アメリカで6坪もないカフェに連れと座っていた晴れ空の夕方
濃緑の壁がときおりまだらに白むのを窓際の席から見ていたときも
同じことを
でもそういうものだし だからあの母娘も海岸に来たのだろう
と未だ目を細めながら海岸の人の往来を
僕は見ていた
君は僕の何故ここに赴いたかを
好きに気にするといい
僕は雪が溶ける前にパッパッと払い落として
手先が凍えないうちにどこかしら店の灯りを
探して 老人として