感想と評 10/2~10/5 ご投稿分 三浦志郎
1 ゆづはさん 「遠い雨の和音」 10/2
(久々の)上席佳作。この詩を美しく鑑賞するには、読み手はそれぞれの中で、雨音ボリュームのつまみを調節する必要があります。弱くては聴こえない、強くては詩にならない。音楽記号で言うと「P(ピアノ・弱く~mp(メゾピアノ・やや弱く))あたりが、ちょうど良いでしょうか、詩はそんな、かそけさ、優しさ、美しさの中に置かれています。音の中に映像があり感触があります。人の気配もありそうです。ふたり?それら全てがわずかずつ差し出され、全てが全て美しい。ああ、美しい!
微妙な謎もあって想像力も掻き立てられます。「楽譜の匂い」―ああ、この言葉、やられましたねえ!「名前のない部屋」―これもいい。美しい名前の与えられた部屋です。詩を締めるに相応しいラスト。空や天気は音を出します。その当然のことに立ち止まったように気づかされた詩でした。
音は天気が不機嫌な時なのですが、その音範囲を選んで美に仕立てるのが詩人の仕事でしょう。この詩はその“良域”にあります。
2 虹乃衣里絵さん 「追憶」 10/2
冒頭佳作。はい、前作より格段に良いです。格調があります。詩があります。この詩の提示するフィーリングは、多くの人が経験し思っているところのものでしょう。それは「ありきたり」の感覚ではなく、普遍と共感の方面で語りたいと思います。この詩の様相を確認します。かつてあった想い、目標、夢。全て過去にはなった。それらは散らばって、叶うことなく、“放置されている”。ただ、この詩の唯一の救いは“廃棄はされてない”ことです。「虚ろに眺めるのみ」でいいんです。
さらには、この詩のキーポイント連・4連です。重要です。その後、詩中、歳月のことが出て来ますが、時間という係数は必ず人に降りかかります。時間に合わせ、目標や夢を捨てることなく、持ってさえあれば、時間の進行に合わせ、次のことができます。
「それが範疇内であるならば、夢を時間に合わせ組み替えてゆく。縮小。地域限定・期間限定、
取捨選択、省略、要約」。―言わば「折り合いをつける」
実は評者も年齢と共にこういった範疇の中にあります。従って、この詩の内容は実に書き手~読み手の共有できるものでありました。
最後に、終連について触れます。良い終連です。虹乃さんの現在位置ですね。しかし、此処から又始めることもできるでしょう。
冒頭風の評に戻ります。前作同様、今作も自己の*忸怩たる思いを表現していますが、前者の具体、後者のやや抽象。書き分けができています。格調という点では後者で、その方面においてはー、そう、この感じで……。ちょっとカッコつけて英語で言います(笑)。
「KEEP THAT SAME FEELING!」
*忸怩たる思い……自分の行動や判断に対して深く恥じ入る気持ちや反省の念を抱くこと。
3 Mayさん 「老老」 10/3
Mayさんにしては珍しい作品と感じました。そういった世代の人の日常詩でしょう。
奥さんの杖は予後の限定のもの。「手帳給付者の私」は障害者手帳のことでしょうか。
「視野の欠けた私」から目に障害があるのでしょうか。まだ杖が必要な奥さんがスーパーまで運転するのは「私」が運転できない事情があるのでしょう。それも含めての「食べられるのは君のおかげ」だと理解できます。その代わり「私」は家では重い物を持ち「君に優しくする」。軽い役割分担。日常の中で軽い不幸に見舞われたが、それももうすぐ終わる。「期間限定」。短い詩ですが、事情や場面の配分が上手く、二人の様子も最低限わかります。何気ない日常会話の中に、お互いの労りの気持ちが滲みます。僕はむしろ、ほのぼのとした明るさを感じましたね。
老老ながらSWEETな二人に甘い佳作を。
4 長谷川ひかりさん 「‘26年しょうねん」 10/3
個性的なタイトル、目を惹きます。結論から言うと、この詩は事情を知らない人には、タイトルも含め、何のことだか全くわかりません。わずかに感知できるのは、基調風景にあるのは、どこか南国の海岸のようです。そこに主人公はいて、過去の回想も含めて、かなりの幻想というか、想像を膨らましているように思えます。そんな詩。文体というか、筆致というか、アプローチの仕方ですが、解釈難解な抽象詩の書き方ではない。あくまで詩が生成するストーリー性を手放していないタッチなのです。そういったフレームにこういった意味不明の事柄を乗せるのは僕は違うと思う。
作者さんは何か勘違いをしているのではないか、そう思わざるを得ません。評価は僕の能力の越えたところにあります。感受性と書く力はあるでしょう。作品の別方向・別趣向をご検討ください。
5 相野零次さん 「詩に思うこと」 10/3
これは評価は割愛させて頂きましょう。そして、これ、ホンネで書きます。そして、ごく当たり前のことを書くかもしれません。結論から書くと、これはエッセイで、詩のサイトに書いているので、エッセイ詩と人は思うでしょう。そして本作は同好の士の世界で誰しも思うことでしょう。虹乃さんの「追憶」の目標・夢の部分とも重なるのですが、誰しも考えることです。1連、2連では同好の士、その相互性がポイントになります。上手い人と接すると、ホント勉強になります。自分にとっての高揚感になります。その意味で尊敬する人物、影響を受けた人物がいるのは幸いなことです。相野さんで言えば最果タヒ氏でしょう。次に来るのが自作の整理と傾向値把握でしょう。「自分は今、何処にいるのか?」
ところで、たとえば、詩の世界で、ひとつの目標・夢として「賞を取る、出版する」があります。誇張して書くと、前者は宝くじを当てるようなもの、後者はーケースによって違いますがー約50万~100万必要です。こちらもベストセラーは、輪をかけて宝くじ並みです。
ところで、僕が本を出した時の経験、思い、以下の如くです。
「売れるわけない。ただ本屋に置いてもらえればそれで良し。後は一族郎党、同好の士、友人に配っておしまい!自分を知ってもらう、自分への記念!生きた証し!」―でした。僕は詩に関して、最低限「自分の為に書く」をモットーにしております。「自己満足」です。僕はこの言葉を世間言うように否定的には捉えてはいません。高尚に言えば「自己実現」です。
これは趣味の原点だと思っています。「自分で楽しむ」ということです。それを、より高度で味わうには満足せず次の段階へ。もちろん自己努力は絶対条件ですが。どの分野のプロもこれが出発点と考えています。この考え方が、その作品が、外に向かい同心円状に共感者が増え、例えば1憶人になったとします。その時に、その作品は名作になったと言えます。
ただ、そうはならなくても「自分の為に書く」で趣味世界は必要充分、完結致します。僕はそう考えています。その具体的ルートとしての、紙世界、WEB世界、どちらも有効。両用も可能です。
ちなみにこのサイトは前者にとっても有益な素地があるはずです。紙世界は衰退傾向ですが、やはり物質として残るのは貴重です。
そして自己へのマイルストーン(ひとつの到達点・節目)になること、間違いありません。励みになります。今後のご活躍に期待しております。
6 じじいじじいさん 「似たもの同士」 10/4
これはいつもと違う、大人の詩ですね。大人で書いたほうがいいですね。そうですね、長い雨が続きました。愛犬もつまらなそうに大あくび。しかし、その真意が早くも4連から出て来ます。ああ、犬社会でありそうな話ですね。おっと!人間社会でも!?そこがこの詩の良く出来たシャレでありオチ的でしょう。面白く読めましたよ。
ちょっと奇妙な似たもの同士。けれども読んでいくと意外とありそな似たもの同士。
やっぱり愛犬、飼い主に似るか!?(笑、失礼!)。そのチワワを連れた美人さんの様子や触れ合いを軽く書いてもよいかも。
あと、このつまらなそうな愛犬くんの犬種が知りたいですね。佳作一歩前で。
7 光山登さん 「幸せの扉」 10/5
この発話主体さんですが、人間が想像上の世界(ファンタジー)を旅しながら、思ったこと、行動しながら得た知恵を寓話的に披瀝してゆく。そういった趣向と解しました。そこでのメッセージを集めてみましょう。幸せについてです。ここで二つのテーゼが提示されます。
1……幸せとは狭いもの。
2……幸せとは相当歩かなければ来ないもの。
ところがこの発話者氏は「そうではないんだ」「1、2、どれも違うんだ」と言っています。
反対にこの人はこんな風に行動します。
「ふんわりと浮かんで」「さらさらと流れる水」「ぷかぷかと身を任せ」「陸に置いてきた」「うとうとと」
こうして、この人は幸せの扉を手にしているわけです。彼の言いたいことは多分こんな感じだと思うのです。
「何も難しく考えることはない。100%発汗しなければならないものでもない。普段から素直に肩の力を抜いて自然体で生きていれば、それに出会える。それはいろいろな形をして、いろいろな場面に存在する。あなたはそれを拾えさえすればよい。要は気の持ちようで幸せの扉はいかようにも開くのだ」。こんな詩だと僕は考えています。 佳作です。
評のおわりに。
「日没まで」
毎日パソコンに向かう
投稿の 評関係
自作の プラン
歴史の 検索
次回の リハーサル譜面と
曲の参照作業(YOU TUBE・ウェイン・ショーター)
その刻(とき)が近づくと
機械が教えてくれる
ささやかに
「まもなく日没です」
私は
この優しい機能の
この簡潔な
抒情言葉が好きでたまらない
机上からの知らせに
その時の色や風景をイメージし
季節ごとにうつろう時間を想う
(ありがとう)
今 その知らせを詩に換えて
今日一日が
終わりに向かうのを記している
(もう そんな時間か 今日 何をしたろうか?)
家を一歩も出ていない
よくあることだ
それは社会と関わらなかったこと
人の為に何もしなかったこと
自分のためだけに動いた時間
一日 一人
で迎えた日没
今日の自分がどうであったにせよ
毎日
律儀にその刻がやって来る
後は 酒と夜の日々
水割りと共に考える
少し日常を動かす
明日は何処かへ行こう
近場でいいのだ
人の中で
人を見て
人と接して
日没までをー
* * *
では、また。