かんちがい 三津山破依
一、年甲斐もなく
まあ、なんだ。
還暦を過ぎたとて
男です。たまには身体も熱くなる。
ははっ、
数年に一度くらい。
そういうこともある。
高血圧の薬を貰うついでに病院へ。
制服の女性が私の手を引き
個室へいざなう。
コンビニエンスストアの女の子は
煙草と釣り銭を手渡して
たまに微笑む。
よたよた、ではなく
すたすた、と。
写真にのこる妻と、
帰って来やしない息子には
言えない。言えるわけもない。
なんだか顔が火照る。
関節が、痛い。
そう言えば、と考えると
やっぱり頭が痛い。
こほんこほん、と喉から自己主張。
今夜はテレビを観ながら
枕を抱いて、寝るけどな。
二、年のわりには
夫の様子がおかしい。
乾いた咳をふたつ、みっつ。
ずっと、なにかを探している。
丑三つ時の早起き散歩は
それは月も、見事だろうね。
戻れば靴下を集めて回る。
お気に入りの王冠模様の小汚いヤツは
ゴミ箱からの復活を繰り返す。
私の名前を忘れるほどに
今夜は雲しか見えないわ。
大声あげて、靴下を咥える。
電話はいつも繋がらずに
私は汚れた床を拭きながら
いっしょに何かを探している。
いつまでも、みつけられずに
夫はいそいそと病院へ出かける。
薬ぶくろばかりが増えていく。
あれ? こんなかんじだったっけ。
年の割には体は元気だ。
今のうちはね。
子どももいないのに。