二人 aristotles200
夜の市民公園を散歩している
街灯の下の
ベンチの左側に座る
痛む右膝をさすっている
向こうから
男が歩いてきて
ベンチの右側に座る
痛むのか、左膝をさすっている
沈黙
何気なく
お互いを見る
!
あり得ない
自分が座っている
地面を向く
似てるだけだろう
顔を上げる
“失礼ですが”
二人とも同じことをいう
貴方は誰ですか
Aです
いえ、違うでしょう
“私がAです”
言葉が重なる
いいでしょう
私がAであると証明しましょう
書斎の机には
パリで買った書見台があり
ジル・ドゥルーズの
「差異と反復」を読んでいる最中です
もちろんです
今、第三章を要約しています
“認識と思考は違う、ここから…”
では、最近買った本は?
地球博物学大図鑑を買いました
もちろん、新訂版をね
顔を見合わせる
私たちは、どちらもAですね
そのようです
待ってください
貴方は右側から来ましたね
ええ
私は左側から、ここに来ました
“差異ですね”
ということは
“私たちは分岐したんです”
面白い
今夜は楽しかったです
そろそろ
家に戻りましょうか
そうですね
“さようなら”
お互い、同じ方向に向かっている
Aが走りだす
もう一人のAも走りだす
先に家に着いて
鍵を締めないと
居場所を取られてしまう
Aが二人
夜道を走っている
膝の痛みを堪えながら
必死の形相で
相手を押し退けている