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スレッドNo.7834

10/13〜10/15 ご投稿分の感想と評です  荻座利守

10/13〜10/15 ご投稿分の感想と評です。宜しくお願い致します。
なお、作者の方々が伝えたかったこととは異なった捉え方をしているかもしれませんが、その場合はそのような受け取り方もあるのだと思っていただければ幸いです。

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10/13 「秋の沈黙」 ゆづはさん

非常に美しい詩ですね。
私の住んでいるところには鹿はいないのですが、その光景がありありと目に浮かぶようです。
まず、1連目と2連目の表現が秀逸です。特に「引き絞られた弓のような月」という表現を間に入れたことで、その夜の緊張感がよりリアルに伝わってきます。
鹿の悲鳴のような鳴き声には、危険を感じたときの「警戒音」、秋の繁殖期におけるオスの「求愛・威嚇の声」、母親を呼ぶ声があるそうです。
秋ということを考えるとオスの求愛の声のようにも思えますが、人家の近くということであれば、警戒音である可能性が高いようにも思います。
それに、これを警戒音とみなしたほうが、この詩の雰囲気にはよく合ってますね。そのほうが4連目の表現にうまくつながります。
また、この連の「一瞬の気配だけを/窓の硝子に宿し」という表現も巧みだと感じました。窓越しの暗闇に潜む息づかいが感じられるかのようです。
そして、その後の「鼓膜の奥にこびりつく/幽かな震え」というところが、秋の沈黙と暗闇の中に深い余韻を残しています。
やはり、秋という季節には「静寂」や「沈黙」が合いますね。しかし、それだけにそのようなテーマで描かれた詩は数多くあると思います。でもこの作品では、その静寂を切り裂く悲鳴のような鳴き声を描くことで、とても美しい緊張感を生んでいます。
ただ欲を言えば、月が弓で喩えられているように、この鳴き声も、矢や剃刀、あるいは氷の薄片など、何か物で喩えてもよかったのではないかなとも思いました。
でもそれはあくまでも「欲を言えば」の話で、全体的に構成もパランスのとれた、美しい作品だと思います。
評につきましては、佳作としたいと思います。


10/13 「かんちがい」 三津山破依さん

前半の『一、年甲斐もなく』は、日常的な出来事をユーモラスに描いた作品ですね。男だから還暦を過ぎても、身体が熱くなることもあるということや、そんなこと誰にも言えないといったことは、なんとなくわかる気がします。
でも、そうはいっても、やはり寄る年波には勝てないということでしょうか。
5連目の「こほんこほん、と喉から自己主張。
」という表現が巧みだと感じました。
そして末尾の「枕を抱いて、寝るけどな。」というところも、どこかアイロニカルでいいですね。
ただ、後半の『二、年のわりには』ですが、正直なところ、どのように解釈してよいものか戸惑っています。
「夫の様子がおかしい。」「丑三つ時の早起き散歩」「大声あげて、靴下を咥える。」などの表現からすると、深夜に徘徊する認知症の高齢者様子を描いたかのようにも思えます。でも本当にそのとおりなのか確認が持てません。
仮にその解釈で読んでみると、「私は汚れた床を拭きながら/いっしょに何かを探している。」といったところなどから、そこには、淡々とした口調の中に潜む、飾らない夫への愛情が見えてくるような気がします。
しかしそうなると、『一、年甲斐もなく』の内容は、その男性の認知症故の幻想、というふうにも読み取れてきます。タイトルの「かんちがい」とは、そうい意味ではないかとも思えてきます。
でも、私の詩を読み込む力が不足している恐れもあります。
解釈を度外視してこの作品を呼んでみると、淡々とした口調の中にもユーモラスのある、そんな表現の光っている面白い作品でもあります。
評につきましては、難しいのですが、佳作一歩前としたいと思います。


10/13 「水紋」 Emaさん

とても美しい詩ですね。
自分のアイデンティティを探している心が、不安的に揺れ動くさまがよく伝わってきます。
整然と並んでいる本に見つめられている、という表現が新鮮でいいですね。自分が本を選ぶのではなく、実は私たちは本に選ばれているのかもしれません。
そして、本の中のある言葉を目にしたときの、「それは水滴となって/凪いだ私の海に落ちて」という表現も、心象をうまく表していて、とても巧みだと感じました。ここからタイトルを水紋とされたのですね。
また、「本はかつて /木であり 森であったと」という視点も新鮮ですね。私たちは本を読むときほとんどこのような視点は持っていません。
さらに本に、木の記憶、外の空気、雨の感触について問いかけているところも、繊細な感覚を感じさせて、とても美しいです。
そして最後の2連で再び、アイデンティティの模索への視点に還ってゆきます。その構成に関してですが、本はかつて木であり森であったという視点が非常に新鮮であるがゆえに、冒頭と末尾のアイデンティティの模索の視点との結びつきがやや弱い感じがします。
タイトルの「水紋」とは、本に記された言葉が、凪いだ心の水面に落ちて生じた波紋のことなのでしょう。そうであるならば、その本に記された言葉の雫が主題となっていると思われます。それが生じさせた波紋が、新たなアイデンティティにつながるのか、という淡い期待を感じさせます。そこに、本が木であった頃の、空気や雨の感触の記憶を結びつけられないでしょうか。例えて言えば、過去の記憶と未来への期待が実はひとつながりのものであり、本に記された言葉はその触媒であった、みたいな感覚です。
とは言え、全体的に表現の美しさや視点の新鮮さはとても優れていると思います。
評につきましては佳作としたいと思います。


10/13 「暁はまだ俺を知らない」 うたい屋さん

初めまして。初めての方ですので、今回は感想のみとします。
何とい言いますか、とても「男っぽい」詩ですね。
まず冒頭の「つぶされる」という一行がいいと感じました。これはいわゆる「つかみ」としてとても効果的だと思います。そしてその後の「何のために/誰のために」という問いを捨てられないというところや、「大人」とか「分別」とかへの言い訳についても、多くの人が共感するでしょう。
さらに「泥人形」の喩えも面白いですね。「乾けばひび割れてさ/濡れりゃ形をなくしてさ」というところを読んで、なるほど、と納得します。
「人はそもそも魔法使い」。その魔法の原動力は欲望でしょうか、野心でしょうか。それとも失われたものを取り戻したいという想いでしょうか。それを取り戻すためには、己の世界を揺らしてみなければならないのでしょう。
未来に何があるか誰にもわかりません。ですから人生とは「一か八か/カードを切る」ことの連続なのかもしれませんね。
「迸れよ」や「青臭くあれ」という表現も力強くていいですね。己の決心や自分自身への鼓舞を感じさせます。
ただ、ネットの中の詩には、このような主題や視点のものが数多くあり、決して珍しいものではないと思います。そのような中で読み手に「ああ、またか」などと思われないためには、何かしらの独自性が必要となるでしょう。
タイトルに「暁」という言葉がありますので、東雲の空や朝焼けの色、あるいは霧消する闇や長い影などといった言葉を用いた比喩を入れてみるのもいいかもしれません。
でも、冒頭の「つぶされる」や、泥人形の喩えは印象的でした。


10/13 「二人」 aristotles200さん

ドッペルゲンガーを描いた作品と思ったのですが、この二人は左右が逆なのですね。
一人の人間が左右に分岐したけれども、還るところは同じというのは、どこか奇妙ですね。
そして、互いに自分の居場所がなくなることを恐れて、必死に相手を押しのけようとしているところが、滑稽でありながらどこか恐ろしい感じもします。
ここには、何か現代社会への含意がありそうな気がします。
私はジル・ドゥルーズの「差異と反復」を読んだことはないのですが、ドゥルーズは存在論のレベルで差異を捉え直したそうですね。
従来の哲学では、例えば「まずリンゴという同一の分類(種)があり、その中に赤さや大きさの違い(差異)がある」と考えていましたが、ドゥルーズはこれを反転させました。「世界の本質は絶えず変化し生成するダイナミックな流動体(差異そのもの)であり、私たちが勝手に枠にはめて『同じリンゴ』と括っているにすぎない」と主張しました。固定された自分や絶対的な真理はなく、変化し続けるプロセスそのものが世界の姿だと捉えたのですね。
これは仏教の、「金剛般若経」や「中論」に述べられている思想に近いような気がします。
ありのままの世界を見ずに、言葉によって抽象された概念を「実体」と捉えてしまうことが、それへの執着や苦悩を生んでしまうのです。
それを踏まえると、最後の、互いに自分の居場所がなくなることを恐れて、必死に相手を押しのけようとしているところの恐ろしさが、より際立ってきます。
絶えず変化し生成するダイナミックな流動体である世界の本質を見ずに、言葉で表された「同一性」を実体視することが、現代社会の様々なところで観られるような、分断や対立や排他的なナショナリズムにつながっているのではないでしょうか。
私にはこの作品の末尾の2つの連に、そのことへの風刺や批判を感じられました。
この解釈が正しいとすると、この作品は現代哲学(特にポスト構造主義)や大乗仏教(特に中観派)の知識が必要となる難しい詩ということにもなります。
しかし個人的にはとても興味深く読ませていただきました。(ちなみに、左右に分岐したのは、政治的な「左右」とかけているのでしょうか?)
評につきましては佳作としたいと思います。

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