評、10/9~10/12、ご投稿分、その1。 島 秀生
●上原有栖さん「棺」
うーーーん、想像するに、その家族席に座ってないのに、ひどく泣いている女性は、深い仲があった人なんでしょうね。現在進行形か、過去形かはわかりませんが。作者もそれを察知して書かれてますが・・・。
まあ、しかし、その場で泣いてくれる人と、泣かないけど、ずっと覚えててくれる人と、そこはいろいろなので・・・。
また、その人は葬式の場で、初めて故人と対面でしょうけど、
家族は、故人がなくなった瞬間から一晩をすごし、翌日通夜、通夜の晩を経て、葬式に至ってますから、葬式の場で泣いていなくても、その前にたっぷり泣いていますので・・・。
なので、葬式の場だけの単純比較はできないというか・・・。
以上は、個人的な意見で、余談でした。
作品ですが、実に流暢でステキですね。
田舎でもなし、都会でもなし、の都市が実は結構あるんですが、そこも上手に書いてくれてますし、めったに故郷に帰らない人間の、ずっと地元にいる人に対する肩身の狭さ、みたいなものも、うまく書いてくれています。また、葬式の大きさや全体を見渡して、故人の人望の高さを推し測るところも繊細です。その洞察力があるから、泣いてる女性が気がかりにもなるのでしょう。
そして、この話のメイン。故人はどんな気持ちで逝ったのだろうか。問いたいとともに、たくさんの温かい参列者がきみのために来てることを伝えてあげたいと思う。
そして、やはり女性のことが気になり、自分の葬式の時に、こんなに肩をふるわせ、泣いてくれる人がいるんだろうかと思う、エンディングです。
うむ、とてもよく書けてると思います。まるでその場にいるかのような臨場感と心情で伝わります。しかも、私と思考回路が似てるんで、ドキッとするくらいです。繊細で美しい文体もいい。作品的にも、女性の存在がいいアクセントになってますね。
名作&代表作入りを。
書き方について1点。
これ、スマホから打ってるから、多少やりにくい部分があって「/」表記を無理矢理使ってるんですかね?
正確なところを言うと、
「/」表記のところは、まずもって素直に改行して、且つ、行頭をひと文字空ける形でスタートしてください。
「/」表記は、紙ベースの折、紙面に改行するスペースがない時に、便宜的に使う改行マークなので、作品発表段階であんまり使うものでないです。素直に改行すべきです。
また、もし、もっと間を置きたい時は、散文詩型であっても、連分けしてもらって、かまいません。
●Mayさん「欠片」
ゆで卵の殻をツルンと剥くように目が覚める
1行目は名言ですね。すばらしい。
でも2行目、3行目を読むと、それに反して、事態は結構混沌状態にあり、
砕けてこぼれた欠片をひとつづつ拾い集めて朝が始まる
という現実の朝に叩き込まれます。
この4行目は、この詩の内容を、究極に語る1行で、とてもよく書けています。
後ろの2行も、おもしろいですね。
なるほど、相撲が好きで、相撲がないあいだは、相撲ロスなんだ。
でも習慣で時間がくるとテレビをつけ、あ、ないとわかって、また消すんですね。
1点わからないのは、
夫はもう「杖をつく人」ではなく「杖を持ち歩く人」になり
杖を置き忘れて探し回る
で、この2行を読むかぎりでは、足の状態が良くなって、杖なしでも、かなり歩けるようなところまで回復した。 という意味合いに受け取れますが、
ここは、そう受け取って良かったんでしょうか?
この詩の他の箇所からすると、ここだけがプラス要素の話があることになるんですが、前後の脈絡を読むと、プラス要素を書いてる場所の感じになってないので、読みながら、この読み方で良かったのかと、不安になりました。
気になったのは、そこだけです。
いい作品だと思います。秀作プラスを。
●月森うさこさん「面の中身は吉か凶か」
ちょっと待って下さい。
これ、( )のつけ方を間違えてないですか?
( )をつけると、その前にある文言が( )内の人が言った言葉って、ことになるんですよ。
つまり、
遊ぼう〜(←人間が言った)遊ぼう〜(←人間が言った)
食べよう(←子の妖が言った)たべよう(←子の妖が言った)
と、いうことになるんです。
これ、( )を逆 使ってないですか?
うしろの2連も、
ちこをよれ(「近う寄れ」がなまったものなので、「ちこうよれ」の表記が正しい)は、人間が言ったセリフでなく、妖怪の親分が言ったセリフに見えます。
3連で、
焼きとうもろこしを抱えて
半泣きで彷徨い辿り着いた
人間の子が
言ったセリフには到底見えません。すごく上から目線の物言いです。
だとすると、
さあさあ、ちこうよれ(妖のカシラ)
の表記にしないと、いけないです。
もともと2連「妖達が集まり宴を始め」ている場ですから、
妖はそれなりの人数がおり、そこにはそれらを束ねるカシラがいる、と思うべきです、この想定であれば。
そこへ、狐の面をつけた人間の子が一人、半泣きで迷いこんできてる、というのがこの場の設定です。最初の3連には、そう書かれています。
ですので、人間の子は一人。
したがい、後ろの2連は「お前達」ではなく、単数形の「お前」でないといけない。
この詩、非常に混乱があるように思えてなりません。
一度、この詩の内容を全部、絵に書いてみて(落書きでいいので)、絵を見て、整理しながら書いていった方がいいです。書いてる本人に混乱があるように思います。
非常におもしろい要素を持った詩ですが、未完成に思います。
このままではもったいないです。再度、整理してみてください。
今はまだ断を下さない、という意味で、評価は保留にします。
●石川ぼうずさん「名前」
人間の欲に向けた営みを、「穴を掘る」で喩えたところは、とてもおもしろいと思いました。
穴を掘って、また埋めて、穴を掘って、また埋めて、人間の営みがそんなふうだとしたら、だから全部が徒労に思ってしまうことがあるんでしょうね。
詩はまた、欲望が他人の中にある時は欲深く見え、自分の内にある時は、良いように名前を変える、ということも説いています。誠にそのとおりやもしれません。一理あると思いました。
とはいえ、人は生きているかぎり、なんらかの穴を掘り続けるんでしょう。
してみると、それ自体を否定することはできず、それが良い方に行くかどうか、だけなのかもしれませんね。
なかなか深く説いてくれてましたし、論理展開のための連分けも、キレイにできていました。
秀作を。
●三津山破依さん「晴れの日」
初連からすると、なにか世界的な競技に参加されてる方がいて、その人とやりとりされてる感じです。LINEでしたらノンストレスで海外在住の方ともやりとりできますもんね。あるいはX等で本人が発信してるのを、受動的に読まれながら、呟いているのかもしれません。
トップアスリートでしたら、半年くらい海外を転戦してるとか、あるんでしょうね。なにか、そういうふうな感じで、季節が変わっていっても、帰ってこないようです。
拝見した感じ、そんな全体像の想像で読ませてもらいました。
ひらいた掌は拳に変わり、
突き上げる。
雲は突き抜けないけれど。
は、おもしろい表現だと思いました。
たぶん、初連が勝利の様子で、それに対してのガッツポーズかもしれません。
断片的なやりとりで、話の途中が抜けてる感があるのが、却って読む方に想像を膨らませてくれるので、おもしろいです。
食べ物の話のところも、なんかナチュラルで、おもしろいです。食べ物のことって、気取らない本当が出てきて、より人間らしいやりとりが行なわれてるという感を持ちます。もしかしたら作者の方は、ちょっと卑屈になりぎみかもしれませんが。
赤い空は夕焼けのこと。
は、ちょっと考えすぎかもしれませんが、アメリカ西海岸とか、ヨーロッパの西海岸とか、西側が海に向いているところというのは、やっぱり夕焼けの見え方が違いますから、もしかたしたら、そうした住んでる地域を意味してるかもしれません。
おもしろかったです。秀作プラスを。
だいぶこの書き方のスタイルが、自分のものになってきましたね。