紫蓮花 ゆづは
宴の灯を吹き消すように
熱を帯びた季節が
冷たい首筋を撫でてゆく
あんなに高く
天を指していた指先は
今 抗うことをやめ
昏い水の階段を
一段 一段降りるたび
爪先から記憶が剥がれゆく
飾り立てた仮面の下
光を吸い込んだ紫の衣が揺れる
すべては
無音の闇へと還るための重さ
冠を脱ぎ捨て
深い眠りの淵へと 身を投じる
裁きも 嫉妬も遠く
心の楔を ひそやかに抜いてゆく
泥の底に
かつての輪郭は霞み
閉じた瞼の裏に
幽かな光がひび割れる
誰にも見つからない場所で
終わりは 始まりの温もりを消して
凪いだ鏡面の向こう側
約束だけが
雪のように
世界のすべてを 覆っていく