夢を見た
何だかその昔河童の国と日本に国交があった
河童の国はそれはそれは貧しかった
世界の水辺が汚れてしまい 魚が捕れなくなったから
食べることに困った河童達は日本に出稼ぎに来るようになった
ある地方の河童達は美しかった だから悪い大人達はこの美しさで儲けようと考えた
ショーパブで
河童達に歌を踊りを覚えさせた
星をちりばめたような眩しい衣装も用意して
開店時間は夜8時
今日はお店に新しい河童が入った
初めて日本に来たらしい
まだ河童語しか話せない
エメラルドのような透き通る肌 吸い込まれそうな大きな瞳、それは深い泉を覗き込んだ時のように神秘的な緑
鼻は爪楊枝で軽くつついたようなドット 少し大きめの嘴が何故か調和してる魅力的な顔
ミラーボールに当たる無限の色の照明の下河童の表情は艷めく
まだ善悪がよく分からない産まれたての赤ちゃんのような眼差しで
円卓のソファに腰掛けている新河童
その隣でふいに心の奥にしまっておいた何か大切な重いものが弾けてしまったお姉さん河童
泣き出してしまった(たまにこんなことがある、けど滅多にないこと)
さっきまでにこやかに常連さんに新河童の紹介をしていたのに
急に両手で顔を覆ってわーっと
大きな声で人目も憚らず泣き出した
こんな時常連さんはいつもより優しい
厨房にあれを頼んでくれる
河童達が河童の国で毎日食べていたあの川魚
河童料理のお店から魚は調達するという
常連さんは温かい眼差しをして
ずっとお姉さん河童の頭を優しく黙って撫でている
今は場違いなBGMだけが騒々しく響き
ようやく焼き魚が運ばれてきた
お姉さん河童が少し気持ちを落ち着けようと頑張っている
その横で新河童はキラキラした目で魚を見つめティと発音し始めた
これはティという大好物の魚
今まで緊張して固まっていた体をBGMに合わせて楽しそうに揺らし始める
夜はどんどん更けていく
もう誰も泣かない
またすぐそこに明日が来てるから
故郷に残してきた家族のことを思い出してる河童にも
家と仕事の重みでまだ帰りたくないお客さんにも
みんな同じに朝がくる
夜は今日のみんなの心を キラキラ星にして夜空に留める
そしてほーっと一息ついてから 朝にどうぞと空を譲っている
そこに目覚まし時計の音が混ざってきた
私は河童のショーガールになった夢を見ていた