干し柿 ゆき
早朝の冷たい風が
当たり前になってくる頃
散歩の途中で見かけた柿の枝に
たわわに実った黄色い実を
そっと触ってみた
すべすべで冷たい感触
美味しそうなのにまだ渋柿で
固くて食べられない
皮を剥いて最後まで丁寧に
愛情をかけてやらないと
丁度良い塩梅に甘くならない と
祖母が言っていた
もうすぐ皮を剥かれて
無防備な柿の実がカーテンのように
軒先に規則正しく吊るされ
昔ながらの光景が
道行く人達を楽しませてくれる
しばらく経って飴色になる頃には
僕はいつも畳間に寝転がって
家の中から眺めていた
外から見るのとは違って
太陽の光の間から見える萎んだ柿の実が
とても特別なものに思えて
白い粉が吹いてくるのが待ち遠しかった
この時期になると何故かセンチメンタルな
気持ちになってくる
少し腰が曲がった祖母は
今年も干し柿を作るだろう
まだ暖かい陽だまりの中
また柿の皮剥きを手伝いに
久しぶりに帰ってみようか