ゴビの荒野 樺里ゆう
十九歳の夏 中国を旅して
ゴビの荒野に立ったとき
わたし ここでしにたい
と思った
三六〇度見渡すかぎり地平線
青い空と 白っぽい砂地
道路がいっぽん 真っ直ぐに伸びるだけ
ここなら
ちょっと 道から外れた所であれば
野垂れじんで
糞尿をまき散らし
腐臭を放ちながら朽ちていっても
誰にも迷惑をかけずに
土に還れる
アパートの一室が
特殊清掃ののち
事故物件になったり
無縁仏として
行政の金で火葬されたりするような
迷惑をかけずに済むと思った
本気で そう思った
二十歳のわたしも相変わらず
ゴビでしにたいと思っていた
それが本心なのか
自分でもわからないまま
二十一歳のとき
わたしはそう思わなくなった
一年を通して
雨がほとんど降らない
あの場所
あんな所でしんだら
土に還れず
ミイラになるじゃないのと
気付いたから
あんなに真剣で
大真面目だった
かつてのわたしが
なんだか可笑しかった
でも
ちゃんと 覚えていたいよ
大変ご無沙汰しております.
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