時計 Liszt
駅前のコーヒーショップから
何とはなしにロータリーを眺めてた
強弱を繰り返す噴水も
舞い立ち舞い降りる鳩の群れも
行き交う人々も
果てしなく繰り返される波のリズムのよう…
いつしかわたしは心うばわれて
風景に溶け込んでいた
それなのに ふと
ロータリーの時計塔に気がついたとたん
あえなく引き戻されてしまった
現実のわたしに―
いつの間に
こんなに針が進んでいたのだろう
永遠に変わらないように見える
のんびりした風景の中で
おまえだけが素知らぬ顔をして
せわしなく時を刻んでいく
周りにお構いなしに
味気なく
無情なほどに
そういえば隣の席の老夫婦も
気がつかないうちに
若いカップルに代わってる
目の前のコーヒーも残りわずか
さあ急いで次の客先へ行かなければ…